スタークラフト年代記 第25話:ゼラスで再び選んだ肉体
この物語の目次
原作の出来事をもとに新たに書き下ろしたファンフィクションです。登場人物の感情や台詞、場面の雰囲気は再構成されており、主要な結末を含みます。
ゼラトゥルの導きでゼラスと原始ザーグを求めるケリガン

巨大なリバイアサンが果てしない宇宙の深淵を切り裂き、ついに原始的な生命力が脈打つ未知の惑星ゼラスの軌道に進入した。深い緑と沸き立つ火山灰が入り混じった大気は、この惑星が秘める野生の暴虐性をそのまま映し出していた。ケリガンはリバイアサンの神経網を通じて伝わるゼラスの荒々しく洗練されていないエネルギーを感じながら、深い思索に沈んでいた。
彼女の背後で濃い影が揺らめき、暗黒騎士ゼラトゥルが特有の足音もなく姿を現した。彼の突然の登場はケリガンに不快な緊張感をもたらしたが、同時に抗えない運命の導きを感じさせた。ゼラトゥルは彼女にゼラスという古代の惑星の幻影を見せ、そこで待ち受ける原始ザーグの力を手に入れてこそ、アモンの破滅的な陰謀を阻止できるのだと、低く厳かな声で説得した。
ゼラトゥルは、こここそがザーグという種族が初めて胎動した故郷であり、堕落したゼル=ナーガ、アモンの手が及んでいない純粋な原始ザーグたちが息づく場所だと説明した。彼の言葉には、長年宇宙を彷徨いながら真実を追い求めてきた者ならではの深い悔恨と確信が満ちていた。ケリガンはその言葉を聞きながら、かつてオーバーマインドが自分に強制した恐ろしい「群れ」の記憶を呼び起こした。
たとえゼラトゥルが自分を救う道を提示しているとしても、ケリガンは過去の因縁とプロトスに対する本能的な警戒心を完全に捨てることはできなかった。彼女は鋭い眼差しでゼラトゥルを射すくめ、なぜあえて自分をこれほど危険な原始の惑星へと導いたのか、その真意を問い詰めた。ゼラトゥルは揺るぎない態度で、ただ彼女だけがアモンの巨大な陰謀を阻止できるのだと答えた。
ゼラトゥルの説明によれば、ゼラスの原始ザーグたちは群れのハイブマインドに束縛されることなく、ただ個体の強さと生存のためだけに絶えず進化を続ける存在だった。アモンがザーグを堕落させて自らの道具にする前の、純粋な生命力がこの惑星全体に流れているというのだ。ケリガンはその言葉を証明するかのように、惑星の地表から放たれる強烈なサイオニック波動を感知した。
その波動は、群れの秩序整然としたネットワークとは全く異なる、生々しい混沌と無限の可能性を同時に秘めた奇妙なエネルギーだった。ケリガンはこの見知らぬ力が、自らの内面に眠るある根源的な渇望を刺激していることに気づいた。それは単に強くなりたいという欲望を超え、失われた真の自己を取り戻そうとする本能的な引力に近かった。
伝えるべき予言をすべて終えたゼラトゥルは、これ以上留まる理由はないと言わんばかりに、静かに虚空の影へと身を隠して消え去った。彼はケリガンが自らの意志で真の力を勝ち取ることを望むという最後の助言を残して去り、一人残されたケリガンはゼラトゥルが示した座標に従い、リバイアサンをゼラスへと向かわせた。軌道に入った彼女は、窓に映る自らの脆弱な人間の姿を見つめ、訪れるであろう巨大な試練を直感した。
今や彼女は、誰の強要も操縦もなく、ただ自らの選択によって、あの険しい原始の密林へと飛び込まねばならなかった。メングスクへの復讐と宇宙の破滅を阻止するためには、現在の不完全な力では到底及ばないことを、彼女自身が誰よりもよく知っていた。ケリガンは固い決意を胸に、リバイアサンの神経網を操作してゼラスの地表へと降下する準備を急いだ。
デハカと原始ザーグの独立的生存方式との出会い

ゼラスの地表に足を踏み入れた瞬間、ケリガンは息が詰まるような熱く湿った空気とともに、四方から襲いかかる猛烈な捕食者たちの気配を感じた。巨大なシダ植物と奇妙にねじれた木々が鬱蒼と生い茂る密林は、それ自体がひとつの巨大な生命体のように蠢いていた。群れのザーグとは明らかに異なる、ただ生存のみを求める盲目的な闘志が空気中に満ちていた。
彼女が慎重に歩みを進めるたび、茂みの中から奇妙な姿をした原始生物たちが鋭い牙を剥き出しにして威嚇する声を上げた。しかし、彼らはケリガンが放つ強力なサイオニックエネルギーに圧倒され、あえて無謀に襲いかかることはできず、周囲をうろつくだけだった。その時、生い茂る葉の隙間から、巨大で醜悪な姿をした生命体がゆっくりと姿を現した。
彼は自らをデハカと名乗り、他の原始ザーグたちのように盲目的な攻撃性を示す代わりに、興味深そうに奇妙な眼光を輝かせてケリガンを観察した。デハカの体には、数々の戦闘の痕跡である深い傷跡が勲章のように刻まれており、その存在感は並みの捕食者とは一線を画していた。ケリガンは直ちに脅威となる存在ではないと直感しつつも、警戒を怠らずに彼と対峙した。
デハカはシューシューという独特のイントネーションで、ゼラスの唯一の法則は原質を集めて変化することだけだと語った。彼にとって原質とは生命力そのものであり、強者の原質を吸収して絶えず自らを進化させることだけが、この過酷な惑星で生き残る唯一の道だった。彼の言葉には、群れの支配体制では見られない、冷酷ながらも純粋な生存の哲学が込められていた。
ケリガンはデハカとの対話を通じて、原始ザーグたちがオーバーマインドや刃の女王のような単一の意志に支配されない、独立した個体であることをはっきりと悟った。彼らは群れをなすこともあるが、根本的にはそれぞれの生存と進化のために互いを狩り、原質を奪い合う果てしない闘争を繰り広げていた。これは、アモンがザーグを堕落させる前の、凄惨でありながらも自由な本来の姿だった。
デハカはケリガンの内面に秘められた巨大な力を感知し、彼女がこれからこの惑星でどれほどの原質を集め、変化していくかを見届ける意向を示した。彼は今すぐ彼女と戦って不確実な勝負をするよりも、彼女の動向を観察し、自分に利益をもたらす機会を窺う狡猾さを見せた。ケリガンは彼の徹底した実利主義的な態度に内心舌を巻きながらも、頷いた。
群れの無条件の服従に慣れていたケリガンにとって、デハカと原始ザーグたちのやり方は新鮮な衝撃であり、新たな可能性として迫ってきた。メングスクの圧政とアモンの巨大な脅威に対抗するためには、彼らのようにいかなる束縛にも縛られない、純粋で爆発的な力が必要だった。彼女はゼラスのやり方こそが自分の進むべき道であることを痛感し、密林のさらに奥深くへと視線を向けた。
デハカは再び暗い密林の影へと音もなく姿を消し、ケリガンは彼がいつでも再び現れて自分の原質を狙う可能性があることを知りながらも、恐れはしなかった。むしろ、この絶え間ない緊張感と生存の脅威が、彼女の感覚をさらに鋭く研ぎ澄ませていた。ケリガンはゼラスの過酷な法則を全身で受け止め、真の力を求める旅をさらに続けていった。
ズールヴァンが語る最初の産卵池とアモンの支配

密林の中心部へと近づくにつれ、地面を揺らす巨大な振動とともに、太古の神秘を宿した圧倒的な意識がケリガンの精神を叩いた。彼女はその巨大な導きに従い、切り立った絶壁と深い渓谷を越え、ついに惑星の心臓部とも言える巨大な盆地に到達した。そこには、山脈のように巨大な体躯を持つ古代の存在、ズールヴァンが長い眠りから覚めて彼女を待っていた。
ズールヴァンの巨大な瞳がゆっくりと開き、放たれる眼光はまるで数千年の歳月を見通すかのような重い圧迫感を与えた。彼はテレパシーを通じてケリガンの脳裏に直接声を響かせ、彼女が抱く傷つき引き裂かれた魂の匂いを嗅ぎ取ることができると告げた。ケリガンは、自らの最も深い内面まで見透かすような古代の存在の洞察力に、一瞬息をのんだ。
ズールヴァンは遥か昔、堕落したゼル=ナーガ、アモンがゼラスを訪れ、ザーグ種族の自由意志を奪ってオーバーマインドという恐ろしい枷をはめた歴史を語った。アモンはザーグを自らの目的のための完璧な生体兵器にするため、「群れ」という画一化された集団知性を強制したのだ。ズールヴァンをはじめとする一部の原始ザーグたちは、その恐ろしい同化から逃れ、深部に隠れて生き延びたのだという。
古代の存在は、アモンの支配を受けていない純粋な力の源泉、すなわちザーグが初めて胎動した「最初の産卵池」がこの近くに存在することを明かした。そこに湛えられた太古の原質は、いかなる堕落も経ていない純粋な生命力そのものであり、ケリガンが失った力を取り戻す唯一の鍵だった。ズールヴァンの説明はケリガンの鼓動を速め、彼女が探し求めていた答えを明確に提示した。
しかし、ズールヴァンは警告を忘れなかった。ケリガンの肉体には、依然としてアモンが植え付けた堕落の痕跡が微細に残っており、それが彼女の真の潜在能力を抑え込んでいるというのだ。人間の体ではその巨大な原始の原質に決して耐えることはできず、もし試みれば肉体も精神もすべてズタズタに引き裂かれるだろうという、恐ろしい警告が脳裏を打った。
ズールヴァンは、アモンの影を完全に消し去り、メングスクを破滅させる圧倒的な力を得るためには、最初の産卵池に入って自らを完全に再構成しなければならないと助言した。それは、かつてオーバーマインドによって強制的に変異させられた恐ろしい経験とは異なり、ただ彼女自身の自由意志で選択しなければならない、苦痛に満ちた進化の過程だった。ケリガンは両拳を固く握りしめ、その重い意味を噛み締めた。
彼女は、かつての刃の女王が持っていた力が、実はアモンに操られる操り人形の能力に過ぎなかったことを痛感した。真の自由と復讐を完成させるためには、誰かにアモンの影の下で与えられた力ではなく、自ら勝ち取った完全な自分の力が必要だった。ズールヴァンの言葉は、彼女が長い間目を背けようとしていた不都合な真実に向き合わせ、同時に新たな希望の火種を灯した。
古代の存在との対話を終えたケリガンは、最初の産卵池が放つ強烈なエネルギーが向かう先へと視線を固定した。ズールヴァンは巨大な息を吐き出し、再び深い沈黙の中へと沈んでいき、盆地にはただ原始の風の音だけが漂っていた。ケリガンは、自分を待ち受ける巨大な運命の渦の中へと歩み入る準備を整え、険しい表情で歩き出した。
イズシャとアバトゥルが感知する群れと原始原質の差異

最初の産卵池へ向かう前、ケリガンはリバイアサンと神経網を接続し、イズシャとアバトゥルにゼラスで発見した原始原質の特性について議論した。リバイアサンの内部はいつもと変わらず静まり返っていたが、二人の助言者はケリガンが送信した原始ザーグの生体データに強烈な反応を示していた。特に進化の巨匠アバトゥルは、興奮と当惑が交錯する奇妙な声を漏らした。
アバトゥルは、原始ザーグの遺伝子構造が、群れの統制された進化とは完全に異なり、極めて混乱し無秩序に絡み合っていると分析した。彼らは目的を持って設計されたのではなく、ただその瞬間の生存と殺戮のために手当たり次第に原質を吸収し、奇形的な変異を繰り返していた。アバトゥルは、このような非効率的な遺伝子結合方式に強い不快感を示し、触手を蠢かせた。
一方、イズシャは、原始ザーグたちが群れのネットワークを全く共有しておらず、それどころか刃の女王の命令すら聞かないという事実に深い懸念を示した。彼女は、これほど荒々しく制御不能な原始のエネルギーが、ともすればケリガンの精神を崩壊させたり、群れの結束を損なったりしかねないと警告した。イズシャの穏やかな声には、女王の身を案じる心からの不安が滲んでいた。
ケリガンは二人の助言者の反応を注意深く聞きながら、群れと原始ザーグの間の根本的な違いを改めて明確に認識した。群れが完璧な統制と効率性を武器とするならば、原始ザーグは予測不可能な野生と、抑圧されない爆発的な力を象徴していた。彼女は、メングスクの堅固な防衛線を突破して復讐を果たすためには、まさにこの獣のような野生が必要だと判断した。
アバトゥルは不平を漏らしながらも、もしケリガンが最初の産卵池の純粋な原質を無事に受け入れるならば、生物学的に前例のない完璧な個体が誕生し得ることを認めた。それはアモンの干渉が排除された純粋なザーグの究極の形態であり、従来の刃の女王を遥かに凌駕する力を持つことになるという分析だった。彼の機械的な声の中に、微かな畏敬の念が混じっていた。
イズシャは依然として危険が大きすぎると引き止めようとしたが、ケリガンの決然とした意志を読み取り、やがて沈黙した。ケリガンは、群れがこれまでアモンの影の下でいかに脆弱で受動的な存在であったかを思い出させ、真の独立のためにはこの危険を必ず冒さねばならないと力説した。彼女の断固たる宣言に、リバイアサン内部の空気さえも粛然とするかのようだった。
ケリガンは、自分を縛り付けていたすべての限界を打ち破り、完全に新しい存在へと生まれ変わる決意をさらに固めた。統制された群れの力だけでは決して成し遂げられない救済と破壊の道を歩むため、彼女は喜んで原始の混沌の中へと身を投じる覚悟ができていた。アバトゥルとイズシャの相反する分析は、むしろ彼女が選んだ道こそが唯一の正解であることを確信させた。
通信を終えたケリガンは、再びゼラスの湿った空気を深く吸い込み、沸き立つ戦意を整えた。自分の選択が宇宙の運命をどう変えるかは分からなかったが、少なくともこれ以上誰かのチェスの駒としては生きないという誓いだけは確固たるものだった。彼女は恐怖を振り払い、自分を呼ぶ最初の産卵池の雄大な振動に向かって、迷わず前進し始めた。
人間の体を捨てる危険と復讐・自由の間で葛藤するケリガン

最初の産卵池が遠くない丘の上で、ケリガンはしばらく足を止め、自らの両手を見つめた。ジム・レイナーが命を懸けてゼル=ナーガの遺物を使用し、取り戻してくれた、脆弱だが温かい人間の肌だった。この両手で二度と誰かを無残に引き裂き殺しはしないと誓った瞬間が脳裏をよぎり、彼女の胸を重く圧迫した。
遺物によって浄化されて以来、彼女は恐ろしい悪夢から目覚めたような安堵感と同時に、耐え難い無力感に苛まれなければならなかった。人間の体ではコーハルの鉄壁の防御を突破することも、メングスクの首を絞めることもできず、迫り来るアモンの巨大な脅威の前には限りなく脆弱な存在に過ぎなかった。彼女は、この薄っぺらな人間性が自分と愛する人々を守ってくれないことを痛感していた。
かつてタソニスで見捨てられた後に経験した、最初の感染の記憶が不意に蘇り、彼女の全身を凍りつかせた。あの時はオーバーマインドの圧倒的な意志に押しつぶされ、抗いながら強制的に怪物へと変えられていく恐ろしい苦痛を味わわねばならなかった。自我を失い、アモンの隷属下で殺戮の化身として操られたあの凄惨な時間は、彼女の魂に永遠に消えない深い傷跡を残した。
しかし、今彼女の前にある選択は違っていた。誰の強要も、抑圧もなく、ただ自らの意志で再び怪物になる道を歩もうとしているのだ。人間としての生活と、ジム・レイナーとのささやかな未来を永遠に諦めなければならないという事実が、胸を引き裂くような痛みとなって押し寄せた。彼女は目を閉じ、自分が守るべきものと破壊すべきものの重さを天秤にかけながら、深い苦悩に陥った。
復讐心だけがすべてではなかった。彼女がこの道を選ばなければ、群れは散り散りになり、宇宙はアモンの手によって徹底的に破滅してしまうだろう。彼女は自分が背負った巨大な責任感と運命の枷を直視し、脆弱な人間の仮面を脱ぎ捨ててこそ真の自由を得られるという、残酷な真実を受け入れた。涙がにじんでいた彼女の瞳に、次第に冷たい決意が宿り始めた。
人間サラ・ケリガンはここで死なねばならなかった。そうしてこそ、原始の力を宿した真の女王が誕生し、メングスクの帝国を灰燼に帰すことができるのだ。彼女は拳を固く握りしめ、爪が肉に食い込む痛みを通じて、自らの固い意志を改めて確認した。もはや過去の傷に縛られ、脆弱に立ち止まっている時間はなかった。
彼女はジム・レイナーの顔を最後に思い浮かべ、心の中で深い別れを告げた。彼が自分を許さないとしても、たとえ自分を嫌悪するようになったとしても、この呪われた運命を喜んで背負うと誓った。すべての迷いと恐怖を振り払い、彼女の表情は、かつてないほど冷徹で断固たるものになっていた。
崖っぷちに立たされたような危うい感情の渦を静めたケリガンは、ついに重い沈黙を破り、最初の産卵池に向かって再び歩き始めた。彼女の足取りにはもはや一分の揺らぎもなく、ただ行く手を阻むすべてのものを引き裂くという猛烈な闘志だけが放たれていた。人間性を生贄に捧げて手に入れる絶対的な力への彼女の意志は、ゼラスの密林よりも激しく燃え上がっていた。
最初の産卵池に入り、ザガラが群れを守る

ケリガンがついに到達した最初の産卵池は、濃い紫色と緑色が入り混じった奇妙な光を放ちながら沸き立っていた。太古の生命力が濃縮された粘液質の液体は、まるで息づく巨大な生物のように脈打ち、ケリガンの接近に反応した。産卵池の周囲の空気は、息を吸うことさえ困難なほど濃密なサイオニックエネルギーに満ちており、それ自体が侵しがたい聖域のようだった。
しかし、彼女の意識を感知した原始の群れのボス、ブラックは、異邦人が神聖な原質を手にするのを阻むため、軍勢を率いて殺到した。ケリガンは繭に入る前、行く手を阻むブラックとその群れを自らの軍勢の力で撃退し、ブラックを倒してその原質を回収した。しかし、ブラックの死後も、残された原始ザーグたちは依然として最初の産卵池に向かって狂ったように押し寄せていた。
ケリガンは、チャ惑星から自分に従い成長してきた群れの母ザガラを呼び出し、最初の産卵池の防衛を任せた。彼女は、自分が産卵池に入って繭の状態になれば完全に無防備になることを告げ、いかなる犠牲を払ってでも変異が終わるまで陣地を死守せよと厳命した。ザガラは女王の崇高な決断に深い敬意を表し、絶対的な忠誠を誓った。
ザガラはかつての単純で無謀だった姿から脱却し、優れた戦術的眼識で防衛線を構築し始めた。彼女はスパイン・クローラーとスポア・クローラーを緻密に配置し、バネリングとローチを活用して原始ザーグの進撃路を効果的に遮断する陣形を組んだ。女王を守るという群れの盲目的な献身が、ザガラの指揮のもとで巨大な防壁として具現化されていた。
防衛線が構築されたのを確認したケリガンは、一分の迷いもなく沸き立つ最初の産卵池の沼の中へと歩み入った。粘り気のある太古の液体が彼女の膝を越え、腰まで達すると、皮膚を焼くような極限の痛みが全身を襲った。しかし、彼女は悲鳴ひとつ上げず、両目を見開いて降り注ぐ原始のエネルギーを全身で受け止めた。
産卵池の原質がケリガンの体内へと猛烈に侵入し、彼女の人間のDNAを無残に破壊して新たな構造へと再構築し始めた。彼女の体を中心に巨大な生体繊維が放出され、瞬く間に厚い繭を形成して彼女を外部の脅威から隔離した。繭の内部では、想像を絶する苦痛の中で生命体の根本的な進化が猛烈に進行していた。
繭の外では、ザガラ率いる群れと原始ザーグたちとの間で凄惨な死闘が繰り広げられていた。原始ザーグたちは同胞の死体を踏み越えて押し寄せ、絶えず防衛線を叩いたが、ザガラは揺らぐことなく兵力を指揮し、女王の安息の地を命懸けで守り抜いた。産卵池の周辺は、引き裂かれた肉片と飛び散る酸性の血液で、凄惨な修羅場と化していった。
繭の中のケリガンは、外部の恐ろしい騒音すら耳に入らないまま、自らの自我が粉々に砕け散っては再び結合する、遥かな深淵の中を彷徨っていた。アモンが残した微細な堕落の痕跡が、原始原質の猛烈な炎によって余すところなく焼き尽くされていくのを感じた。苦痛の果てに、彼女はついに完璧な自由と、想像を絶する新たな力の結晶へと形作られていった。
原始の刃の女王として生まれ変わり、原始の群れのボスたちを制圧

長い防衛戦の末、ザガラの防衛線が限界に達した頃、最初の産卵池の中央にある巨大な繭から、眩い紫色の閃光が放たれた。大地を揺るがす巨大なサイオニック衝撃波が四方へと広がり、押し寄せていた原始ザーグたちを刈り取るように一掃した。戦場を満たしていた獣たちの咆哮が一瞬にして止み、息が詰まるような静寂がゼラスの盆地を重く支配した。
粉々に砕け散った繭の残骸の中から、ついにケリガンがゆっくりと姿を現した。彼女はもはや、かつての醜く感染した操り人形でも、脆弱な人間でもなかった。鋭い棘骨と優雅に輝く紫色の甲殻で武装した彼女の新たな肉体は、原始の野生と圧倒的な女王の威厳を完璧に調和させていた。真の「原始の刃の女王」が誕生したのだ。
彼女の背中から伸びる翼の骨は以前よりも遥かに巨大で鋭く、全身からはアモンの堕落が完全に排除された、純粋で爆発的なエネルギーが揺らめいていた。ケリガンは自らの新しい手を握り締めては開き、血管を流れる無限の力の躍動に身震した。かつての不完全だった力とは比較にすらならない、ただ彼女自身だけの完全な力だった。
女王の復活に驚愕したのも束の間、ゼラスの強力な原始の群れのボスたちであるヤグドラ、クレイス、スリヴァンは、怒りに満ちた咆哮を上げてケリガンに直接戦いを挑んできた。彼らは自らの領土と原質を守るため、そして新たに生まれた異邦人の力を試し、喰らうために、巨大な軍勢を率いて彼女を追い詰めた。
しかし、原始の刃の女王として生まれ変わったケリガンは、口元に冷たい微笑を浮かべて軽やかに跳躍した。彼女が手を伸ばすと、強力なサイオニックエネルギーが吹き荒れ、酸性物質を吐き出すヤグドラと巨大なクレイスの頑丈な甲殻を紙切れのように引き裂いた。かつてアモンの隷属下にあった第一次感染時の緑色の眼光とは異なり、今や自らの意志で制御する紫色の眼光を輝かせ、破壊的な力を自然に放っていた。
ケリガンは敵陣の真ん中へと飛び込み、原始のボスたちと直接肉弾戦を繰り広げた。鋭い翼 of 骨が閃くたびにボスたちの巨大な身体が切り刻まれ、彼女が放つ運動エネルギーは周囲の原始ザーグたちを跡形もなく蒸発させた。圧倒的な武力を前に、ゼラスの誇り高き捕食者たちは悲惨な悲鳴とともに次々と膝を屈した。
倒れたボスたちの体から抜け出た強力なエッセンスが、まるで磁石に引き寄せられるようにケリガンの体内へと吸収された。エッセンスを吸収するたびに彼女のサイオニックエネルギーはさらに増幅され、その眼光は猛烈な紫色に燃え上がった。これは単なる殺戮ではなく、ゼルスの法則に従った完璧な征服であり、新たな頂点の誕生を告げる壮大な儀式だった。
圧倒的な虐殺劇が終わると、戦場にはただケリガンだけが一人そびえ立ち、荒い息を吐いていた。遠くからこのすべての過程を見守っていたデハカと生き残った原始ザーグたちは、もはや抵抗する意志を失い、彼女の足元にひれ伏して服従の意を示した。強者だけが生き残るゼラスの残酷な法則の上で、ケリガンは力によって彼らすべてを屈服させ、真の支配者として君臨した。
ズールヴァンとの決戦後、アモンの隷属を脱した新たな力を得る

勝利の余韻が冷めやらぬうちに、突如大地が真っ二つに裂け、凄まじい地震が盆地全体を揺るがした。崩れ落ちる絶壁の間から、古代の存在ズールヴァンが恐ろしい本性を現し、巨大な体躯を起こした。彼はケリガンが原始の原質を吸収して最も完璧な状態になるのを待ち構え、彼女を喰らうことで自らが究極の生命体へと進化しようという、狡猾な下心を隠していたのだ。
ズールヴァンの巨大な触手が天を覆い、ケリガンに向かって落雷のように降り注ぎ。彼はケリガンの力がいかに強くなろうとも、数千年を生きてきた自らの圧倒的な質量と古代の知恵の前には、単なる獲物に過ぎないと嘲笑した。ケリガンは裏切りに驚くどころか、むしろ「ゼラスらしい結末だ」と冷ややかに鼻で笑い、猛烈な勢いで反撃を開始した。
巨大な古代の怪物と、新たに誕生した原始の刃の女王との戦闘は、ゼラスの地形そのものを変えてしまうほどの凄まじい破壊力を伴った。ズールヴァンが吐き出す酸性の息吹と巨大な触手の攻撃を、ケリガンは目にも留まらぬ速さで回避し、彼の弱点を執拗に突き刺した。彼女の翼の骨から放たれる凝縮されたサイオニックエネルギーが、ズールヴァンの厚い皮を貫き、深い傷を残した。
戦闘が激化するにつれ、ケリガンは自分がかつてオーバーマインドに感染させられた時とは根本的に異なる存在であることを痛感した。あの時は殺戮衝動に駆られ、盲目的に破壊を繰り返す怪物だったが、今の彼女は完璧な理性と冷徹な判断力で自らの力を制御していた。この力は誰かに注入された呪いではなく、彼女が人間性を放棄して自ら勝ち取った高貴な結実だった。
ズールヴァンは予想外のケリガンの強さに動揺し、足掻くようにすべてのエネルギーをかき集めて最後の一撃を準備した。しかし、ケリガンはそれよりも一歩早く空中へと高く跳躍し、全身のサイオニックエネルギーをひとつに凝縮して、流星のようにズールヴァンの巨大な頭部へと突き刺さった。引き裂かれるような轟音とともにズールヴァンの巨大な頭蓋骨が粉々に砕け散り、凄まじい悲鳴が大気を切り裂いた。
古代の存在は巨大な土煙を上げながらついに崩れ落ち、彼の胴体から流れ出た膨大で純粋な古代の原質が、滝のようにケリガンへと降り注いだ。ケリガンは両腕を広げてその巨大なエネルギーを余すところなく吸収し、自らの限界を再び突破した。ズールヴァンの死は、彼女がゼラスのいかなる存在よりも優位に立つ、唯一無二の最強の存在であることを証明する完璧な終止符だった。
すべての戦闘が終わり、静寂が訪れたゼラスの大地の上で、ケリガンは目を閉じ、自らの内面を深く見つめた。アモンの暗い囁きも、オーバーマインドの抑圧的な意志も、もはや存在しなかった。ただ彼女自身の澄んだ明確な自我だけが、無限の力の海の上で燦然と輝いていた。彼女はついに、すべての隷属の鎖を断ち切り、完全な自由を勝ち取ったのだ。
ケリガンはゆっくりと目を開け、空に浮かぶ自らのリバイアサンを見上げた。今や彼女は群れを率いる真の女王として、メングスクの堕落した帝国を打ち砕き、アモンの巨大な陰謀を粉砕するすべての準備を整えた。彼女の背後で巨大な翼の骨が威圧的に広がり、宇宙に向けた原始の刃の女王の血塗られた復讐が本格的に始まったことを宣言していた。
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