スタークラフト年代記 第16話:同盟の屍の上に築かれた玉座
この物語の目次
原作の出来事をもとに新たに執筆されたファンフィクションです。登場人物の感情や台詞、場面の雰囲気は再構成されており、主要な結末を含みます。
裏切りの爪牙がコーハルを襲う

コーハルの灰色の空には、しばしの平穏な空気が流れていた。テラン自治領の首都を無事に奪還したという勝鬨の余韻も冷めやらぬうちに、ケリガンのザーグ軍団は同盟軍が油断した隙を突き、密かに動き始めていた。メングスクの軍勢とプロトス遠征隊は、それぞれの駐屯地で傷を癒やしながら休息を取っており、血生臭い裏切りがこれほど早く訪れようとは、誰も予想だにしていなかった。
エドモンド・デューク将軍は、自らの旗艦「ノラドIII」の指揮席に深く腰掛け、得意満面の笑みを浮かべていた。メングスク皇帝の傍らで再びコーハルの栄光を享受する空想に浸っていた彼の耳に、突如として鋭い警告音が鳴り響いた。レーダー網を埋め尽くした無数の赤い点は、味方に分類されていたはずのザーグの群れであり、彼らは猛烈な速度で自治領の軌道防衛線へと殺到していた。
デュークが状況を把握し、艦隊全体に戦闘態勢を発令するよりも早く、巨大なスクージの群れがノラドIIIの船体に容赦なく体当たりを敢行した。装甲が引き裂かれ、内部に侵入したザーグの怪物たちが乗組員を虐殺する悲鳴が通信網を通じて響き渡った。デュークは怒りに震えながら主砲の発射を命じたが、すでに旗艦の動力炉は致命的な損傷を受け、制御不能の状態に陥っていた。
火炎に包まれた艦橋で、デュークは最期までメングスクの名を叫びながら抵抗を試みた。しかし、なだれ込んできたヒドラリスクたちが吐き出す酸性液が、彼の古びた制服と肉体を無残に溶かし去り、自治領の老将軍は自らが人生を捧げた宇宙船とともに、コーハルの軌道上で悲惨な最期を遂げた。ノラドIIIの巨大な残骸は、燃え盛る流星となってコーハルの地表へと墜落していった。
同じ頃、地上に駐屯していたプロトスの陣営でも、凄惨な虐殺劇が繰り広げられていた。フェニックスは自らのドラグーンの機体に伝わる振動を感じながら、空から降り注ぐザーグの降下嚢を驚愕の眼差しで見上げていた。彼はケリガンがいつか裏切るであろうことを心の奥底で予感していたが、同盟の血が乾かぬうちにこれほど全面的な奇襲を仕掛けてくるとは夢にも思わなかった。
フェニックスは直ちに戦士たちを糾合して防衛陣形を整えたが、ケリガンが動員した軍団の規模は彼らの想像を遥かに超えていた。地中から突き出たルーカーの棘がプロトス歩兵の隊列を崩壊させ、空を覆い尽くすミュータリスクは光子キャノンの射程を嘲笑うかのようにエネルギー網を破壊していった。フェニックスは最前線でフェイズ・ディスラプターを絶え間なく放ち、同胞を守るために死力を尽くして抗戦した。
しかし、果てしなく押し寄せるザーグの波は、老い、疲れ果てたプロトスの英雄の意志さえも挫こうとしていた。ウルトラリスクの群れが防衛線を突破すると、フェニックスを護衛していたジロットたちが一人、また一人と無残に倒れていった。フェニックスは自らの機械の身体が限界に達し、警告音を発しているのを感じながらも、決して退くことなく、巨大な獣たちの足元に向けて破壊的なエネルギーを放ち続けた。
ついに数十匹のザーグの群れがフェニックスのドラグーンに襲いかかり、厚い装甲板が引き裂かれて内部の生命維持装置が破壊された。フェニックスは最期の瞬間まで戦士としての名誉を失わずに敵を睨みつけていたが、鋭い爪が彼の機械の心臓を貫いた瞬間、視界が霞んでいった。アイアーの偉大な英雄は、コーハルの塵にまみれた大地の上で、冷たい機械の破片とともに永遠の眠りについた。
崩れ去った信頼と燃え上がる怒り

ジム・レイナー率いるレイナー遊撃隊がコーハルの地表に到着したとき、彼らを迎えたのは立ち込める黒煙と凄惨な虐殺の痕跡だけだった。自治領の基地とプロトスの駐屯地は形を留めないほどに踏みにじられ、大地には引き裂かれた旗と砕け散った金属の残骸だけが転がっていた。不吉な予感に襲われたレイナーは、生存者を捜索するために必死で部隊を率い、プロトス陣営の中心部へと向かった。
そこでレイナーは、無残に破壊され煙を吹き上げている巨大なドラグーンの残骸を発見した。それは、彼が誰よりも信頼し、頼りにしていた戦友、フェニックスの機体だった。レイナーはガタガタと膝をつき、冷たく冷え切った機械の装甲に手を当てたまま、湧き上がる悲しみと絶望を抑えきれずにうなだれた。荒い呼吸の間から押し殺した呻き声が漏れ、彼の両拳は血がにじむほど固く握りしめられた。
レイナーの脳裏には、フェニックスとともに死線を越えながら交わした数々の会話や戦闘の記憶が走馬灯のように駆け巡った。種族の壁を越えて真の兄弟愛を分かち合ったあの高潔な戦士は、今やケリガンの強欲な野望の前に無残な犠牲となってしまった。レイナーは、フェニックスの死が単なる一戦士の死ではなく、自分が守り抜こうとした最後の希望と人間性の喪失であることを骨の髄まで思い知らされた。
その瞬間、レイナーの通信機から、聞き覚えのある、しかし身の毛もよだつ声が流れ込んできた。ケリガンだった。彼女はフェニックスとデュークの死を嘲笑い、これこそが自分に立ち塞がる者たちが迎えるべき当然の結末だと冷酷に宣言した。かつて自分が愛した女性の温もりはどこにもなく、ただ虐殺と支配のみを渇望する怪物の嘲笑が、レイナーの鼓膜を鋭く抉った。
レイナーは通信スクリーンの向こうに見える「刃の女王」の瞳を凝視し、彼女の内面にかろうじて残っているかもしれないと信じていた、一縷の人間性への期待を完全に捨て去った。彼の知るサラ・ケリガンはとうの昔に死んでおり、目の前にいる存在は全宇宙を破滅へと陥れる悪魔にすぎなかった。レイナーの胸の中で、悲しみは抑えきれない怒りへと変貌し、冷たく燃え上がり始めた。
レイナーは湧き上がる怒りを抑え、低く断固とした声でケリガンへの復讐を誓った。いつか必ず自分の手で彼女の息の根を止めてみせると、たとえ明日でなくとも宇宙の果てまで追い詰め、この恐るべき裏切りの代償を払わせると宣言した。彼の声には微塵の迷いもなく、ただフェニックスの魂を慰めるための、凄絶な決意だけが深く刻まれていた。
ケリガンはレイナーの誓いを可笑しそうに嘲笑い、今すぐ彼を殺せるにもかかわらず、あえて生かしておくと告げた。彼女はレイナーが自分の軍団にとって何の脅威にもならないと嘲り、絶望の中で一生苦しみながら生きるがいいという残酷な呪いを残して通信を切った。暗転したスクリーンの前で、レイナーは唇を噛み締め、彼女の傲慢さがいつか破滅を招くことを心に誓った。
レイナーは生き残った少数の隊員を率い、沈痛な面持ちでハイペリオンへと帰還した。灰色に染まったコーハルの大地を背に、彼は船の操縦席に座り、果てしない宇宙の深淵を見つめた。彼の心は復讐心で冷たく凍りつき、これから進むべき道は、ただ刃の女王の破滅へと向かう孤独で険しい旅路だけであることを、静かに受け入れていた。
拉致された女家長と強要された取引

シャークラスの隠密な寺院の内部で瞑想にふけっていたゼラトゥルは、突如として虚空の神経網の彼方から恐ろしい断絶感を感じ取った。ダークテンプラーの精神的支柱であり、偉大な女家長であるラザガルの気配が、跡形もなく消え去ってしまったのだ。ゼラトゥルは驚愕し、寺院の至る所を捜索したが、女家長の寝所にはただザーグ特有の腐敗したクリープと、暴力的な拉致の痕跡だけがまざまざと残されていた。
混乱に陥るゼラトゥルとダークテンプラーたちの前にホログラム通信が開き、ケリガンの姿が現れた。彼女は特有の狡猾な笑みを浮かべ、自分がラザガルを「安全に」保護していると宣言した。ゼラトゥルの両目から青い眼光が怒りで燃え上がり、今すぐ女家長を返さなければ軍団の心臓部を灰にしてやると脅したが、ケリガンは微塵も動じなかった。
ケリガンはラザガルの命を人質に、ゼラトゥルに残酷な取引を強要した。地球執政連合(UED)がチャールで制御している新たなオーバーマインドを、ダークテンプラーの力で完全に破壊せよというものだった。彼女は、ダークテンプラーの虚空のエネルギーでなければオーバーマインドの生命力を永久に絶つことはできないと知っており、自らの支配権を確固たるものにするためにゼラトゥルの刃を利用しようとしたのだ。
ゼラトゥルはこの提案が罠であり、オーバーマインドが破壊された瞬間にケリガンがザーグ軍団の唯一無二の支配者になることを痛いほど理解していた。しかし、ラザガルはダークテンプラーの魂そのものであり、彼女を失うことは種族の破滅を意味していた。ジレンマに陥ったゼラトゥルは拳を固く握りしめて苦悩し、彼の内面では大義と女家長の安全が激しく衝突し、彼を苛んだ。
その時、通信画面の向こうにラザガルの姿が現れた。彼女は驚くほど落ち着いた声で、ゼラトゥルにケリガンの要求に応じるよう指示した。ゼラトゥルは女家長の声に微かに混じる異質なイントネーションと濁った瞳に気づき、胸の奥に冷たい疑念を抱いたが、今すぐ彼女を救い出さねばならないという切迫感が彼の理性を押し潰していた。
結局、ゼラトゥルは屈辱的な条件に同意せざるを得なかった。彼はケリガンに対し、オーバーマインドを破壊した直後に必ず女家長を無事に引き渡すという誓いを立てさせ、通信を終了した。ゼラトゥルは重い足取りで寺院を後にし、最も信頼するダークテンプラーの戦士たちを招集した。彼らの表情には怒りと悲しみが交錯していたが、女家長を救うためなら喜んで命を捧げる覚悟ができていた。
ゼラトゥルと彼の部隊は、クローキング装置を作動させた宇宙船に乗り込み、ザーグの本拠地であるチャールへと針路を向けた。宇宙空間を突き進む間、ゼラトゥルはラザガルの最期の眼差しを思い浮かべ、不吉な予感を振り払うことができなかった。彼女の魂がすでに何らかの闇に蝕まれているのではないかという恐怖が彼の心を締め付けたが、彼は努めてその考えを打ち消し、迫り来る戦闘に集中しようとした。
チャールの軌道に進入すると、赤く燃え盛る溶岩の大地と、大気を満たすザーグの群れの凄まじい悪臭が彼らを迎えた。地球執政連合の防衛線と野生のザーグが入り乱れ、阿鼻叫喚を極める戦場のただ中へ、ゼラトゥルはただラザガルを救出するという一念のみで闇に身を潜め、降下を開始した。それはダークテンプラーの歴史上、最も悲劇的な任務の幕開けだった。
チャールの心臓部を穿つ

チャールの地表は、地球執政連合のサイオニック分裂機の影響下で制御されたザーグの群れと、UEDの防衛部隊によって幾重にも取り囲まれていた。ゼラトゥルとダークテンプラーたちは影に溶け込み、感覚を研ぎ澄ませて敵の哨戒網を巧みに回避しながら目標へと進んだ。彼らの目的はただ一つ、惑星の中心部にある巨大な噴火口の中で鼓動している、新たなオーバーマインドの心臓部だった。
UEDの防衛線は堅固だったが、虚空のエネルギーを操るダークテンプラーの隠密な機動を完全に防ぐことはできなかった。ゼラトゥルのワープ・ブレードが虚空を切り裂くたびに、UEDの兵士や制御されたザーグたちが音もなく倒れ、彼らはついにオーバーマインドを取り巻く巨大な触手と神経網の前に到達した。オーバーマインドはまだ不完全な状態だったが、放たれるサイオニック・エネルギーは周囲の大気を揺らすほど圧倒的だった。
ゼラトゥルはオーバーマインドの醜悪な姿を見上げ、自らのワープ・ブレードに虚空のエネルギーを極限まで凝縮させた。刃から放たれる濃緑色の光芒は、周囲の赤い溶岩の光を飲み込むかのように猛烈に燃え上がった。彼は同胞たちの犠牲と女家長の安全を胸に、一気に跳躍し、オーバーマインドの最も脆弱な神経核に向けて渾身の力を込めて刃を突き立てた。
ワープ・ブレードがオーバーマインドの神経核を貫いた瞬間、耳を劈くような凄まじい悲鳴がチャール全土を揺るがした。虚空のエネルギーがオーバーマインドの生命力を根源から破壊し始め、巨大な肉塊は激しい痙攣を起こしながら徐々に崩れ落ちていった。UEDがオーバーマインドを通じて維持していたサイオニック制御網は粉々に砕け散り、制御を失ったザーグの群れは極度の混乱に陥って互いを攻撃し始めた。
オーバーマインドの息の根が完全に止まると、待ってましたとばかりにケリガンが数多のザーグの護衛を従えて戦場に姿を現した。彼女は制御から解き放たれた無数のザーグの群れが、即座に自らのサイオニック支配下に組み込まれていくのを感じ、歓喜に満ちた笑声を上げた。もはやこのセクターにおいて、彼女の軍団を制御できる存在は誰一人として残っておらず、彼女は真の刃の女王として生まれ変わったのだ。
ゼラトゥルは刃を収め、怒りに歪んだ顔でケリガンへと歩み寄った。彼は約束通りオーバーマインドを破壊したのだから、直ちにラザガルを返すよう断固として要求した。ケリガンは得意げな表情で頷き、自らの背後に控えていたラザガルを前へと呼び出した。ゼラトゥルは女家長の無事な姿を見て安堵のため息を漏らし、彼女を迎え入れるために手を伸ばした。
しかし、ラザガルはゼラトゥルの手を冷たく振り払い、ケリガンの傍らへと引き下がった。彼女は焦点の合わない虚ろな瞳でゼラトゥルを見つめ、自分は偉大なる刃の女王に仕えることこそが唯一の喜びであり、決して彼女の傍を離れることはないと宣言した。その瞬間、ゼラトゥルの心臓は氷のように冷たく凍りつき、周囲の空気さえも重く沈み込むような錯覚に陥った。
ゼラトゥルは信じがたい現実を前に、全身を小刻みに震わせた。その時になってようやく、彼はラザガルが単に人質として捕らえられていたのではなく、すでに遥か昔からケリガンの恐るべき精神支配に完全に蝕まれ、彼女の傀儡に成り下がっていたことを悟った。ダークテンプラーの最も賢明な指導者がザーグの奴隷になっていたという惨憺たる真実は、ゼラトゥルの魂をズタズタに引き裂いていた。
解放のための悲しき刃

ゼラトゥルの世界が粉々に砕け散るようだった。数百年にわたりダークテンプラーを率い、知恵と慈悲の象徴であったラザガルが、今や醜悪なザーグの女王の足元で盲目的な忠誠を誓っている。ゼラトゥルは絶望に満ちた眼差しで女家長の名を必死に呼んだが、彼女の唇からはただケリガンを賛美する、奇怪で虚ろな言葉だけが流れ出るばかりだった。
ケリガンはゼラトゥルの凄絶な苦痛を楽しみながら、薄汚い笑みを浮かべた。彼女はシャークラスにいた頃からすでにラザガルの精神に巧妙に侵入して彼女を操っており、ゼラトゥルとプロトス同盟が取ったすべての行動が、結局は自分の計画通りに動いた結果にすぎないと嘲笑った。その残酷な告白は、ゼラトゥルが抱いていた最後の希望の火種さえも無残に踏みにじる死刑宣告のようだった。
ゼラトゥルは虚空の力を引き出し、ラザガルの精神を覆う闇の帳を払いのけようと試みた。しかし、ケリガンが植え付けたザーグの汚染は、すでに女家長の魂の深淵にまで根を張っており、いかなる手段を以てしても元に戻せない状態だった。無理に精神支配を断ち切ろうとすれば、ラザガルの自我そのものが完全に破壊され、永遠の苦痛の中に閉じ込められることは明白だった。
苦悩の沼でもがいていたゼラトゥルは、ついに最も恐ろしく、避けることのできない決断に至った。ダークテンプラーの偉大な指導者がザーグの奴隷に成り下がり、永遠に辱められるのを見ているわけにはいかなかった。彼女に真の安息をもたらす道はただ一つ、彼女の肉体を破壊し、堕落した魂を解放することだけだった。ゼラトゥルの両目から熱い涙が流れ落ち、彼の荒れた頬を濡らした。
ゼラトゥルは震える手でワープ・ブレードの柄を握り直した。彼はケリガンに向けていた怒りを収め、ただ深い悲しみだけが満ちた眼差しでラザガルを見つめた。一瞬の迷いも許されないその時、ゼラトゥルは稲妻のように身を翻し、ケリガンではなくラザガルに向かって突進した。彼の動きはあまりにも速く、そして決然としていたため、ケリガンさえも反応できずに目を見開いた。
青い閃光が走った瞬間、ワープ・ブレードの鋭い刃がラザガルの胸を正確に貫いた。女家長の身体が大きくよろめき、彼女の口から苦痛に満ちた呻き声が漏れた。肉体を拘束していた生命力が絶たれると同時に、彼女の精神を縛り付けていたケリガンのサイオニックの鎖も粉々に砕け散った。ゼラトゥルは崩れ落ちるラザガルの身体を、そっと腕の中に抱きとめた。
死の淵でようやく精神支配から解き放たれたラザガルの瞳に、澄んだ光が戻った。彼女は血を吐きながらも穏やかな微笑みを浮かべ、恐ろしい束縛から自分を解放してくれたゼラトゥルに深い感謝を伝えた。ラザガルは震える手でゼラトゥルの顔を撫で、彼にダークテンプラーの未来を託すという最期の遺言を残し、永遠の沈黙へと沈んでいった。
女家長の冷たくなった遺体を抱きしめ、ゼラトゥルは天に向かって獣のように咆哮した。その凄絶な悲しみの残響が、チャールの赤い大気を切り裂いた。ケリガンは自らの傀儡を失った怒りを露わにする代わりに、ゼラトゥルを殺すよりも生かしておき、一生「自らの手で女家長を殺した」という罪悪感と苦痛の中で悶え苦しませる方が、遥かに残酷な刑罰であることに気づき、邪悪な笑みを浮かべた。彼女はゼラトゥルを嘲笑いながら去らせ、ゼラトゥルは消えることのない魂の傷を抱えて闇の中へと消え去った。
闇の中で孕まれた凶物

チャールから逃れるように脱出したゼラトゥルは、深い悲嘆に暮れながら宇宙を彷徨っていた。そんな中、彼の宇宙船のレーダーに、地図に記録されていない暗い衛星から、微弱ながらも奇妙なプロトスのエネルギー信号が感知された。この荒涼とした辺境に同胞が存在するはずがないという疑念を抱きつつ、ゼラトゥルは真相を確かめるため、クローキング状態で衛星の地表へと慎重に着陸した。
衛星の地下には、人工的に造られた巨大で陰鬱な実験施設が隠されていた。ゼラトゥルが闇を切り裂いて施設内部に侵入すると、ひんやりとした冷気とともに、機械装置が放つ青い光が彼の視界を照らし出した。通路の突き当たりに達したゼラトゥルは、巨大な静止カプセルが整然と並ぶ光景を目にし、その中に収められた内容物を確認した瞬間、息を呑まざるを得なかった。
静止カプセルの中には、プロトスの高貴な身体構造とザーグの醜悪な生体組織が奇怪に融合した生命体たちが眠っていた。それは自然の摂理に反する恐るべき神への冒涜であり、二つの種族の真髄を強制的に掛け合わせて造られた「ハイブリッド」だった。ゼラトゥルはカプセルに手を当て、これらの怪物が放つ邪悪で圧倒的なサイオニックの波動に、骨の髄まで染み渡る恐怖を感じた。
その時、施設の濃い影の中から、見覚えのある人影が歩み出てきた。サミール・デュランだった。彼はケリガンの手下として活動していた頃とは全く異なる、傲慢で超越的な余裕を湛えてゼラトゥルを迎えた。ゼラトゥルは即座にワープ・ブレードを抜き放ち、ケリガンの邪悪な陰謀を今すぐ中止するよう警告したが、デュランは嘲笑を浮かべ、自分は刃の女王などには仕えていないと答えた。
デュランの口から語られる真実は、ゼラトゥルの想像を遥かに超えるものだった。デュランは、自分が単なる人間でも、ザーグの感染体でもなく、数千年の歳月の間に数多くの名で呼ばれてきた存在であると明かした。彼は宇宙の遥かな深淵で眠りについている、ケリガンさえも到底及ばない巨大で古代の主人に仕えており、このハイブリッド実験はその主人の偉大なる計画の一部にすぎないと宣言した。
デュランの存在感は、ゼラトゥルがこれまでに遭遇したどの敵とも異なっていた。彼の瞳の奥深くには、宇宙の終焉を静観するかのような、不気味な深淵が横たわっていた。デュランは、この衛星にいるハイブリッドたちは数ある実験体の極一部にすぎず、やがて宇宙全土に散らばるハイブリッドたちが目覚め、すべての生命体を破滅の輪廻へと引きずり込むだろうと傲慢に予言した。
その恐るべき黙示録的な宣言に、ゼラトゥルは抑えきれない怒りを感じ、デュランに向けてワープ・ブレードを振り下ろした。しかし、刃がデュランの首を切り裂く直前、彼の姿は煙のように霧散し、虚空へと消え去ってしまった。施設内にはただデュランの奇怪な笑い声だけが木霊のように残り、ゼラトゥルの耳元を彷徨った。そして静止カプセルの中のハイブリッドたちは、今なお不気味な鼓動を刻み続けていた。
ゼラトゥルは、打ち砕くことのできない巨大な絶望感を抱いて施設を後にした。ラザガルを失った悲しみさえも贅沢に思えるほど、宇宙全体を飲み込む巨大な闇の影が迫っていることを直感した。彼はこの恐るべき真実を同胞たちに伝えねばならないという重い使命感を肩に背負い、誰も知らない暗い宇宙の深淵へと、孤独な飛行を開始した。
オメガの巨大なる激突

チャールの軌道上空に位置する巨大な宇宙ステーション「オメガ・プラットフォーム」の上で、ケリガンは迫り来る巨大な嵐の気配を堪能しながら、一人佇んでいた。彼女のサイオニック感覚は、宇宙空間を切り裂いてワープしてくる三つの巨大な艦隊の波動を鮮明に捉えていた。ついに自らの支配権に挑むすべての敵が一堂に会するその瞬間、彼女の口元に冷酷な笑みが浮かんだ。
漆黒の宇宙を切り裂き、メングスク率いるテラン自治領艦隊、アルタニスが指揮するプロトス遠征隊、そしてデュガル提督率いる地球執政連合(UED)の残存艦隊が同時に姿を現した。互いを憎み合っていた三つの勢力は、ただ「刃の女王」という絶対的な脅威を排除するためだけに一時的な同盟を結び、四方からオメガ・プラットフォームに向けて砲門を開き、猛烈な攻勢を開始した。
数百隻のバトルクルーザーとキャリアが放つレーザーと反物質ミサイルが、チャールの空を真昼のように明るく照らし出した。同盟軍の挟撃は精緻かつ致命的であり、彼らは絶え間なく浴びせかける火力でザーグの外郭防衛線を急速に突破していった。ケリガンへの復讐心と生存への切迫感が絡み合ったこの巨大な攻撃は、ザーグ軍団を圧倒しているかのように見えた。
しかし、ケリガンはプラットフォームの頂点で両腕を広げ、オーバーマインドの制御から解き放たれ、完全に一つに統合されたザーグ軍団の真の怒りを解放した。チャールの地表と軌道の至る所から、数え切れないほどのスクージとミュータリスクの群れが黒い雲のように湧き上がり、同盟軍の艦隊を襲った。それは戦術や戦略を無意味にする、純粋で圧倒的な物量の嵐だった。
最初に崩壊の兆しを見せたのは、メングスクの自治領艦隊だった。巨大なディファイラーが吐き出す腐食性胞子によってバトルクルーザーの装甲が溶け落ち、内部に侵入したザーグの生物たちが乗組員を蹂躙した。メングスクは通信網を通じてケリガンに呪いの言葉を吐き散らし、最後まで抗戦しようとしたが、旗艦の損傷が限界に達すると、ついに屈辱的な退却を命じるしかなかった。
右翼を担っていたアルタニスのプロトス艦隊もまた、苦戦を強いられていた。キャリアから出撃したインターセプターが光の軌跡を描きながらザーグの群れを切り裂いたが、倒しても倒しても終わりなく押し寄せる敵の数に、徐々に圧倒されていった。アルタニスは、これ以上の犠牲は同胞の滅亡を招くだけだという痛切な判断を下し、生き残った艦船を率いて戦場を離脱した。
自治領とプロトスが撤退すると、戦場にはただデュガル提督率いるUED艦隊だけが孤立して残された。ケリガンは軍団の全火力をUED艦隊へと集中させ、巨大な宇宙獣たちが、防衛線を失ったバトルクルーザーを紙切れのように引き裂き始めた。デュガルの艦隊は必死に抵抗したが、四方を包囲するザーグの波の中で、徐々に沈没していった。
最後のUED艦船までもが火炎に包まれて爆発する光景を見届けながら、ケリガンはオメガ・プラットフォームの上で勝利の咆哮を上げた。三種族の連合軍を完璧に踏みにじった彼女は、今やコプルル・セクターに敵なしの絶対的な支配者として君臨した。同盟者たちの引き裂かれた屍と、破壊された艦船の残骸が散らばる宇宙を背景に、刃の女王の暗き玉座が完成した瞬間だった。
提督の遺書と軍団の女王

チャールの軌道から辛うじて脱出したUEDの旗艦「アレクサンダー」は、無残な姿で宇宙空間を漂うように進んでいた。船体の半分以上が破壊されて動力を失い、通路の至る所で警告音とともに火花が散っていた。生き残った少数の乗組員たちは絶望に沈み、沈黙を守っていた。地球へ帰還できるという希望は、すでにとうの昔に砕け散っていた。
ジェラード・デュガル提督は、暗く静まり返った自らの艦長室に一人座り、ぼんやりと虚空を見つめていた。かつて地球の栄光をコプルル・セクターに轟かせると豪語して出陣した彼の野望は、今や完全なる敗北という重い足枷となり、彼の息の根を締め付けていた。数万光年離れた故郷・地球は、もはや永遠に届かない蜃気楼のように遥か彼方に感じられた。
デュガルの脳裏には、自分が犯した最も恐ろしい過ちの記憶が亡霊のように浮かび上がった。デュランの嘘に騙され、生涯の友であったアレクセイ・ストゥコフを裏切り、死へと追いやったあの瞬間が、鋭い短刀のように彼の心を突き刺した。ストゥコフの警告を無視した自らの傲慢さが、結局は遠征隊全体を破滅へと導いたという、骨を刺すような罪悪感が彼を押し潰していた。
彼は重い手を持ち上げ、机の引き出しから旧式の万年筆と紙を取り出した。最先端のデジタル機器の代わりに、彼は自らの最後の本心を文字として残したかったのだ。デュガルは地球に残してきた愛する妻ヘレナを想い、震える手で遺書を書き綴り始めた。紙の上に滲むインクには、敗将の悲哀と取り返しのつかない後悔が深く染み込んでいた。
遺書の中で、デュガルは自らのすべての失敗を告白した。アレクセイを殺したのは敵ではなく自分の愚かさであり、UED遠征隊はただの一隻も地球へ帰還することはできないという惨憺たる真実を書き記した。彼は妻に、自分を許さないでほしいと、このすべての悲劇の責任はひとえに自らの傲慢さにあることを認め、最後の別れの言葉を完成させた。
ペンを置いた瞬間、アレクサンダーの厚い装甲板の向こうから、身の毛もよだつ金属の摩擦音が聞こえてきた。ケリガンは決して彼らを生かして帰すつもりはなく、ザーグの群れがすでに船の外壁を突き破って内部へと雪崩れ込んでいた。乗組員の断末魔と怪物たちの咆哮が艦長室の扉のすぐ前まで迫ると、デュガルは静かに目を閉じ、自らの運命を受け入れた。
デュガルは机の上に置かれていた拳銃を手に取り、ゆっくりと自らのこめかみへと向けた。扉が破られ、醜悪なザーグの爪が闇の中から姿を現したその瞬間、冷たく乾いた一発の銃声が艦長室の静寂を切り裂いた。偉大な提督の生涯は異郷の宇宙で悲惨な最期を遂げ、UED遠征隊は歴史の闇へと永遠に消え去った。
同じ頃、チャールの地表に立ったケリガンは、夜空を彩る星々の光を見つめながら一人佇んでいた。彼女を脅かしていたすべての敵は破滅し、巨大な軍団はただ彼女の意志のままに息づいていた。ブロード・ウォーの火炎が吹き荒れたコプルル・セクターには、深い闇と沈黙だけが残り、刃の女王はその孤独な頂点から宇宙を見下ろし、長きにわたる支配の始まりを迎えた。
コメント 1
피닉스가 쓰러진 잔해를 보며 레이너가 느꼈을 허탈함은 정말 상상조차 안 되네요. 용기병의 마지막이 이렇게까지 비극적일 줄은 몰랐어요. 😭