スタークラフト年代記 第22話:遺物が輝くまで
原作の出来事をもとに新たに執筆されたファンフィクションです。登場人物の感情や台詞、場面の雰囲気は再構成されており、主要な結末を含んでいます。
最後の防衛線の構築

惑星チャールの赤い大地は、煮えたぎる溶岩と鼻を突く硫黄の臭いに満ちていた。ジム・レイナーは険しい表情で、ゼルナーガの遺物が安置される主要拠点の地盤を確認した。ウォーフィールド将軍率いるドミニオンの生存者たちとレイナー遊撃隊が連合して構築したこの最後の防衛線は、彼らのすべてを賭けた絶望的な賭けだった。
軌道から降下した巨大なゼルナーガの遺物の破片が一つに組み立てられ、荘厳な振動を引き起こした。遺物が放つ青い光は、惑星チャールの赤く濁った大気と鮮明な対比をなし、不吉な希望を象徴していた。技術者たちと建設ロボットが絶え間なく動き回り、遺物の動力網を主基地に接続した。
レイナーは宇宙服のヘルメットを脱ぎ、汗に濡れた額を拭いながら、防衛塔が建設される光景を見守った。バンカーと攻城戦車(シージ・タンク)が狭い路地ごとに配置され、火炎放射兵たちは塹壕の中で武器の燃料圧力を点検し、近づきつつある地獄に備えていた。兵士たちの瞳には、恐怖と決意が奇妙に混ざり合っていた。
タイカス・フィンドレーは葉巻をくわえたまま、巨大な銃身を肩に担いでレイナーの傍へと近づいてきた。彼は特有の太く濁った声で、この作戦がいかに狂気じみているかを愚痴りながらも、防衛線の脆弱な部分を正確に指摘し、火力を補強すべき位置を提案した。二人の古い友人は、戦場の臭いを共有していた。
遺物の充電率を示す計器盤が徐々に上がり始めると、大地を揺らすザーグの咆哮が遠くから聞こえ始めた。刃の女王が、自身の心臓部へと侵入してきた不速の客たちに向けて怒りを爆発させているのは明らかだった。空はブロード・ロードとミュータリスクの羽ばたきによって黒く染まる兆しを見せていた。
ウォーフィールド将軍は、負傷した腕を機械の義手へと換え、指揮所でホログラム地図を投影して兵力を調整していた。彼はレイナーに通信を送り、遺物が完全に充電されるまでに防衛線が崩壊すれば、すべてが終わるという事実を改めて思い知らせた。レイナーは黙って頷き、小銃を固く握りしめた。
基地外縁の感知塔が赤い警告灯を猛烈に点滅させ、数万匹の生命体が接近していることを知らせた。スパイダーマインを埋設し、海兵(マリーン)たちが戦闘刺激剤(スティムパック)を準備する間、レイナーは通信網を開き、すべての兵力に向けて最後の激励の言葉を送った。今日が彼らにとって最後の日になるかもしれないからだった。
巨大なゼルナーガの遺物が最初の動力波動を放出して重低音を響かせると、まるでその音に応えるかのように、薄暗がりの広がる地平線の向こうからザーグの先遣隊が姿を現した。ジム・レイナーはヘルメットのバイザーを下げ、照準の十字線に最初の標的を固定し、防衛戦の始まりを告げる引き金を引いた。
地下の脅威と空の恐怖

最後の戦いを前に、レイナーとウォーフィールド将軍はザーグの兵力を弱体化させるため、重大な戦術的決断を下さねばならなかった。チャールの地下は巨大なナイダス・ネットワークで絡み合っており、空はスパイアから溢れ出る飛行生命体で満ちていた。二つの脅威を同時に排除するための時間と兵力は、圧倒的に不足していた。
ウォーフィールド将軍は、ホログラム地図上に赤く表示されたナイダス・ネットワークの交差点を指差し、ザーグが防衛線の内部へ直接侵入してくるのを防がねばならないと主張した。地下の脅威を排除しなければ、バンカーや塹壕がいかに堅固であっても、後方から飛び出す群れによって一瞬にして蹂躙されるだろうという強力な警告だった。
マット・ホーナーは、軌道プラットフォームに密集するザーグの空中兵力を叩くべきだと意見を述べた。ブロード・ロードが攻城戦車の射程外からブロードリングを放ち、ミュータリスクが防衛線を爆撃すれば、地上兵力だけでは遺物を守り抜くことはできないというのが彼の冷徹な分析だった。どちらの選択にも一理あった。
レイナーは顎をさすりながら、二つの作戦がもたらす結果を脳内でシミュレーションした。ナイダス・ネットワークを破壊して地上防衛の安定性を確保するか、それとも軌道プラットフォームを無力化して空の恐怖を消し去るか。この選択の分岐は、最後の防衛戦で彼らが迎える敵の構成を完全に変えてしまうはずだった。
もしナイダス・ネットワークを破壊する作戦を選ぶなら、兵士たちは煮えたぎる溶岩地帯を突破して地下深くへと進入し、爆薬を設置しなければならなかった。その代償として、最後の戦いで空を覆い尽くすブロード・ロードの爆撃に耐え抜かねばならない。防衛線の対空火力を極限まで引き上げなければ生き残れない、過酷な道だった。
逆に空中兵力を無力化する作戦を選ぶなら、遊撃隊は軌道プラットフォームの冷却施設を破壊し、ザーグの飛行生命体たちを根絶やしにしなければならなかった。しかしこの場合、最後の防衛戦で基地の真ん中を突き破って出現するナイダス・ワームの触手と、絶え間なく押し寄せる地上兵力の圧倒的な物量を全身で受け止めねばならなかった。
レイナーは、自身の決断が数多くの兵士たちの命に直結するという重い責任感を感じながら決断を下した。どちらの選択をしようとも、刃の女王は残された片方の戦力を極大化させ、彼らの息の根を止めにかかることは明白だった。彼は遊撃隊員たちに作戦目標を下達し、選択の代償を甘んじて受けるという固い覚悟を固めた。
分岐作戦が成功裏に終わった後も、チャールの大気は依然として重く、押しつぶされそうだった。片方の脅威を排除することには成功したものの、刃の女王の怒りはむしろさらに激しく燃え上がっていた。レイナーは基地へと帰還して防衛線を再整備し、間もなく押し寄せるであろう、半減したとはいえ依然として致命的な災厄を黙々と待った。
刃の女王の降臨

ゼルナーガの遺物のエネルギーが大気を切り裂きながら振動し始めると、チャールの地殻がねじれるような轟音とともに、ザーグ軍団の総攻撃が始まった。地平線の彼方から押し寄せるザーグリングとヒドラリスクの群れは、まるで赤い大地を飲み込む巨大な褐色の津波のように見えた。防衛線の火器が一斉に火を噴いた。
攻城戦車の砲弾が敵陣の真ん中に着弾し、土煙とザーグの破片を天高く舞い上がらせた。バンカー内の海兵たちはガウスライフルの銃身が過熱するまで引き金を引き続け、火炎放射兵たちは接近する敵に向けて熱い火柱を放った。しかし、ザーグの圧倒的な物量は一向に衰える気配を見せなかった。
戦場の騒音の中、突如として兵士たちの無線機に恐ろしいサイオニック波動が侵入した。骨を削るような鋭い声が、彼らの脳裏を直接打撃した。刃の女王、サラ・ケリガンがついに戦場の中心に姿を現したのだ。彼女の背中から伸びる骨の翼が、不吉な紫色のエネルギーを放っていた。
ケリガンが手を伸ばすと、巨大なサイオニック・ストームが防衛線一帯を席巻した。頑丈に構築されていたバンカーが紙切れのように引き裂かれ、その中にいた兵士たちは悲鳴を上げる間もなく灰へと変わった。彼女の圧倒的な力の前に、ドミニオンと遊撃隊の防衛線は一瞬にして巨大な穴が開き、崩壊の危機に瀕した。
レイナーは引き裂かれた防衛線に向けて予備兵力を投入しながら叫んだ。彼はケリガンが遺物を破壊するために自ら動くことを知っていた。彼女の瞳は人間性を完全に失い、ただ軍団の意志と破壊の本能だけを宿していた。レイナーの胸の奥が刺すように痛んだが、彼は視線を逸らさなかった。
タイカスはミニガンを猛烈に回転させ、ケリガンに向けて弾丸の雨を降らせた。しかし、刃の女王はサイオニックの障壁を展開して降り注ぐ弾丸を軽々と弾き返し、手招き一つで巨大な攻城戦車を宙に吊り上げて叩きつけた。その破壊的な威力を前に、周囲の兵士たちは恐怖に怯えて後ずさりした。
ケリガンはレイナーのいる指揮所に向けてゆっくりと近づきながら、嘲笑を交えたテレパシーを送ってきた。彼女は、この無謀な抵抗がいかに無意味であるか、そしてゼルナーガの遺物が自分を止めることなどできないという傲慢さを隠さなかった。レイナーは彼女の声から、かつてのサラ・ケリガンの面影を探そうと必死に努めたが、聞こえてくるのは怪物の殺意だけだった。
レイナーが通信網の向こうから必死に呼びかけたが、返答の代わりに飛んできたのは致命的なサイオニックの刃だった。レイナーは間一髪で身をかわし、彼が立っていた場所の鋼鉄の床が深く抉り取られた。遺物の充電率はまだ目標値に達しておらず、刃の女王の怒りは今まさに頂点へと向かって容赦なく突き進んでいた。
耐え抜くべき時間

ゼルナーガの遺物の充電率が徐々に上昇するにつれ、放出されるエネルギー波動も指数関数的に強力になっていった。その波動はザーグの生命体たちに極限の苦痛を与えたが、同時に彼らを獣のような狂乱状態へと追い込んだ。兵士たちは四方から降り注ぐ爪と酸性液を防ぎながら、一歩も退かない凄惨な死闘を繰り広げた。
レイナーは最前線へと飛び込み、ザーグリングの群れに向けて散弾銃を発砲した。空の薬莢が赤い土の上に落ちる音は、戦場の砲声の中にかき消された。彼の傍らで戦っていた一人の海兵がベインリングの爆発に巻き込まれて倒れると、レイナーは歯を食いしばり、残された敵に向けて怒りの銃撃と手榴弾を惜しみなく浴びせた。
指揮所の画面には、防衛線の耐久度がリアルタイムで低下していく様子が表示されていた。ウォーフィールド将軍は残された医療船(メディバック)を総動員して負傷者を後送し、弾薬を補給したが、消耗する速度に追いつくには到底及ばなかった。遺物が完全に充電されるまでの残された時間は、戦場の全員にとって、まるで永遠のように長く苦痛に満ちたものに感じられた。
タイカスは宇宙服が傷つき煤けた状態でレイナーの背後を守り、絶え間なく引き金を引き続けた。彼は汗と血にまみれた顔でレイナーに対し、遺物が時間通りに作動しなければ俺たちは全員ザーグの餌食だ、と荒々しい冗談を飛ばした。レイナーは苦笑いを浮かべてその冗談に合わせ、再び敵陣に向けて火力を集中させた。
空からはミュータリスクの楔虫が雨のように降り注ぎ、地上ではウルトラリスクの巨大なカイザー・ブレードが塹壕を容赦なく踏みにじった。兵士たちは恐怖と絶望の中でも、レイナーの指揮のもとで頑なに持ち場を守り抜いた。彼らは、この遺物がチャールから生きて脱出するための唯一の希望であることを本能的に悟っていた。
ケリガンは遺物のエネルギーが自身のサイオニック接続網を干渉するのを感じ、さらに激しく兵力を駆り立てた。彼女は自ら戦場に飛び込み、防衛塔を破壊し、兵士たちを虐殺しながら、遺物へと続く道を力ずくでこじ開けようとした。レイナーは狙撃手を配置して彼女の接近を最大限遅らせようとしたが、力及ばぬ状況だった。
遺物の充電率が90パーセントを超えると、遺物周辺の空間が歪み、眩い閃光が漏れ出し始めた。その光を見たザーグの群れは本能的な恐怖を感じてたじろいだが、刃の女王の強圧的な命令によって再び防衛線へと身を投じた。レイナーは最後に残った戦闘刺激剤を注入し、戦列を整えた。
レイナーの切実な叫びが通信網を通じてすべての兵士の耳に響き渡んだ。防衛線はすでに限界に達し、あちこちで崩壊しつつあったが、兵士たちは最後に残った弾倉を空にしながら決死の抵抗を続けた。巨大な遺物の動力核がついに臨界点に達し、戦場のすべてを飲み込むかのような、目を開けていられないほどの光を放ち始めた。
純白の浄化

ゼルナーガの遺物の充電率がついに100パーセントに達した瞬間、戦場のすべての騒音が、一瞬にして真空の中に吸い込まれたかのように消え去った。続いて耳を劈くような高周波音とともに、遺物の中心部から巨大なエネルギーの嵐が放出された。眩い純白の光が、チャールの赤い大地と煮えたぎる溶岩を一瞬にして飲み込んだ。
遺物から放たれたエネルギー波動は同心円を描きながら恐ろしい速度で広がっていった。その光に触れたザーグの生命体たちは、悲鳴を上げる間もなく細胞単位で崩壊し、一掴みの灰へと変わった。空を覆っていたブロード・ロードやミュータリスクたちも例外なく燃え上がり、黒い雨となって赤い大地の上へと無力に降り注いだ。
塹壕の中に身を潜めていたレイナーと兵士たちは、ヘルメットのバイザーが最大値まで暗くなったにもかかわらず、目を開けていられないほど強烈な光に耐えねばならなかった。彼らは遺物の波動が人間には害を及ぼさないことを知っていたが、骨の髄まで染み渡る見知らぬエネルギーの振動に、本能的な恐怖と畏敬の念を同時に抱いた。
光の波動が刃の女王を襲った瞬間、ケリガンは恐ろしい悲鳴を上げた。彼女の体を包んでいた強固なザーグの外皮が裂け、背中の骨の翼が焼け焦げて崩れ落ちた。彼女はサイオニック・エネルギーを絞り出して抵抗しようとしたが、ゼルナーガの古代の遺物は、彼女の体内に宿るザーグのエッセンスを容赦なく浄化していった。
ケリガンの悲鳴は、次第に怪物の咆哮から、苦痛に悶える人間の女性の悲鳴へと変わっていった。彼女の体を縛り付けていた軍団の接続網が断ち切られ、彼女の意識を押し潰していた暗黒の影響力もともに粉々に砕け散った。赤い溶岩地帯の上へと彼女の体は力なく崩れ落ちるように倒れ、濃い煙の中へと姿を消した。
遺物のエネルギー放出が止まると、チャールの空を覆っていた厚い雲が晴れ、奇妙な静寂が訪れた。果てしなく押し寄せていたザーグの波は跡形もなく消え去り、大地の上にはただ白く焼け焦げた灰と重苦しい沈黙だけが残された。兵士たちは信じられない光景に息を呑みながら、ゆっくりと塹壕の外へと顔を出した。
生き残ったドミニオンの兵士たちと遊撃隊員たちの間から、安堵のため息と歓声が沸き起こった。彼らは互いに抱き合って生存の喜びを分かち合ったが、レイナーの視線はただ、遺物が光を放っていた中心部だけを向いていた。彼はヘルメットを脱ぎ捨て、煙の立ち込める噴火口の方へと急ぎ足で歩みを進め始めた。
レイナーの心臓は激しく鼓動していた。遺物がザーグを掃討したという事実よりも、その光の中でケリガンがどうなったのかが、彼にとって唯一の関心事だった。彼はまだ冷めやらぬ大気の熱気を突き抜け、灰色の煙の合間に倒れている、見慣れた、しかし見知らぬシルエットに向けて、慎重ながらも確固たる歩みで近づいていった。
取り戻した人間性

濃い煙をかき分けて進んだレイナーの目の前に、信じられない光景が広がっていた。赤い土の上に倒れていたのは、恐ろしい骨の翼を持った怪物、刃の女王ではなかった。赤い髪をなびかせ、荒い息を吐きながら、傷つきか弱い一人の人間の女性、サラ・ケリガンが丸くなってそこに倒れていた。
レイナーは武器を地面に落とし、震える膝を折って彼女の傍らに座り込んだ。彼はそっと手を伸ばし、彼女の肩を抱き寄せた。冷たく硬かったザーグの外皮の代わりに、温かく柔らかい人間の肌が彼の指先に触れた。それは、彼が数年もの間、恐ろしい悪夢の中でも切望し続けていた、まさにその感触だった。
ケリガンが辛うじて目を開けた。燃え盛るような黄色い眼光は消え去り、レイナーが記憶していた澄んだ深い人間の瞳が彼を見上げていた。彼女の眼差しには混乱と苦痛、そして深い悲しみが滲んでいた。彼女はかすれた声でジムの名を呼び、レイナーは抑えきれない感情が込み上げるのを感じながら、彼女を胸に抱きしめた。
レイナーの胸の中では、数万もの感情が渦巻いていた。ターソニスで彼女を置き去りにして去らねばならなかった罪悪感、刃の女王となって数多くの命を奪った彼女への恨み、そしてついに彼女を取り戻したという安堵感が混ざり合い、彼の息を詰まらせた。彼はただ、彼女の赤い髪を撫でながら「大丈夫だ」と囁くことしかできなかった。
ケリガンの体には依然としてザーグの痕跡が微かに残っていたが、彼女の魂は確かに人間のものへと戻っていた。彼女はレイナーの胸に寄りかかり、自分が犯した恐ろしい記憶が押し寄せるかのように体を震わせた。レイナーはその震えを全身で受け止め、この瞬間だけはいかなる代償を払ってでも彼女を守り抜くと誓った。
周囲の煙が徐々に晴れ、生き残った遊撃隊員たちが一人、また一人と彼らの周りに集まり始めた。兵士たちは人間に戻ったケリガンの姿を見て、驚愕と不信の入り混じった表情を浮かべた。彼らにとって、彼女は依然として数多くの戦友を虐殺した宇宙の敵であったため、引き金にかけた指を容易に離すことができず、警戒態勢を維持した。
レイナーは兵士たちの敵対的な視線を感じ、ケリガンを自分の背後に隠すようにしっかりと抱きかかえた。彼は毅然とした眼差しで周囲を見渡し、彼女はもう刃の女王ではなくサラ・ケリガンだと宣言した。彼の声にはいかなる反論も許さないという強い意志が込められており、兵士たちはしぶしぶ武器を下ろした。
人間に戻ったケリガンを腕に抱いたレイナーは、ついに長い悪夢が終わったことを実感した。しかし、彼女を完全に救い出すためには、まだ越えねばならない山が数多くあるという事実も痛いほど分かっていた。彼は負傷した彼女をそっと抱き上げ、帰還のための輸送船が着陸する地点に向けて、重くも希望に満ちた一歩を踏み出し始めた。
明らかになった裏切り

レイナーがケリガンを抱いて輸送船へ向かおうとしたその瞬間、重い足音とともに巨大な装甲服を着た人影が彼の行く手を阻んだ。タイカス・フィンドレーだった。彼のバイザー越しに見える表情からは、いつもの不敵な笑みが完全に消え去り、冷たく強張っていた。彼の先には重厚な小銃が握られ、戦闘を暗示していた。
タイカスはレイナーの腕に抱かれたケリガンを見下ろし、苦々しい声で口を開いた。彼は、このすべての作戦がアークチュラス・メンスクと結んだ秘密の契約の一部であったことを打ち明けた。メンスクはタイカスに自由を与える代償として、刃の女王が最も脆弱になった瞬間に彼女の息の根を止めろという、残酷な命令を下していたのだ。
レイナーの顔が強張った。彼はタイカスが刑務所から釈放された背後にメンスクがいるのではないかと疑ったことはあったが、その目的がケリガンの暗殺だとは夢にも思わなかった。古い友人の口から放たれた裏切りの言葉は、チャールの溶岩よりも熱くレイナーの胸を焦がした。彼はケリガンを地面にそっと横たえ、タイカスと対峙した。
タイカスは自身の装甲服に内蔵された通信機を指差した。メンスクはタイカスの生命維持装置を遠隔で制御しており、ケリガンを殺さなければタイカス自身が死ぬことになるという過酷な足枷がはめられていた。彼はレイナーに対し、自分には選択の余地がなかったのだと悲痛に訴え、銃口をゆっくりとケリガンへと向けた。
タイカスの荒い声には、微かな震えが混じっていた。彼は古い友人とメンスクの命令の間で激しく葛藤していたが、生存への本能が彼を押し潰していた。レイナーはタイカスの眼差しから、彼が最終的に引き金を引くであろうことを直感し、静かに腰の拳銃へと手を伸ばしながら、表情を硬くした。
ケリガンは地面に倒れたまま、二人の男の対峙を見守り、苦しげな息を吐き出した。彼女は、自分が死ぬことでしかこの悲劇が終わらないのであれば喜んで受け入れると言わんばかりに、諦めた表情で目を閉じた。しかし、レイナーは彼女を二度と失うつもりはなかった。彼はタイカスに「頼むから銃を収めてくれ」と哀願し、最後に友人の理性に訴えかけようとした。
張り詰めた緊張感が戦場を包み込んだ。周囲の兵士たちは、二人の英雄の悲劇的な対立に割り込むこともできず、息を潜めて状況を見守った。タイカスの指が引き金に向けて徐々に力を込めていく瞬間、レイナーの瞳に揺るぎない決意がよぎった。彼は過去の友情よりも、今守るべき人を選択せねばならない過酷な運命に立たされた。
レイナーの低く悲しげな声がチャールの大気を切り裂いた。タイカスがケリガンに向けて銃口を完全に合わせたその刹那、レイナーの手が稲妻のように動いた。鋭い銃声が静寂を破って響き渡り、タイカスの巨大な体がその衝撃で大きくよろめいた。二人の友人の長い絆が、メンスクの陰謀の中で粉々に砕け散った瞬間だった。
自由の翼を広げて

レイナーの拳銃から放たれた弾丸は、タイカスの装甲服のバイザーを正確に貫いた。タイカスの手から小銃が力なく地面へと落ち、彼の巨大な体が崩れ落ちて赤い土煙を上げた。長きにわたり苦楽を共にした戦友であり、友の死を前に、レイナーの銃口は微かに震えており、彼の瞳は深い悲しみに沈んでいた。
レイナーは銃を下ろし、タイカスの遺体を黙って見下ろした。彼は友を撃ったという恐ろしい罪悪感と、メンスクの残酷な罠が結局このような悲劇を生んだという怒りに包まれた。タイカスは死ぬ瞬間までレイナーを恨んでいないかのように平穏な表情を浮かべており、それがレイナーの引き裂かれた胸をさらに苦しめた。
マット・ホーナーの切迫した声が通信機を通じて聞こえてきた。ドミニオン艦隊と遊撃隊の輸送船が生存者たちを乗せて軌道へと撤退する準備を終えたという報告だった。レイナーには悲しみに暮れている時間さえなかった。彼はタイカスに最後の黙祷を捧げた後、再び向き直って地面に倒れているケリガンへと近づき、彼女の状態をそっと確認した。
レイナーはケリガンをそっと抱き上げた。彼女は意識を失ったまま彼の腕に力なく寄りかかり、彼女の体温がレイナーの宇宙服越しに伝わってきた。彼は彼女を守るためにあまりにも多くのものを犠牲にせねばならなかったが、彼女の穏やかな顔を見た瞬間、そのすべての犠牲が決して無駄ではなかったと感じながら、重い一歩を踏み出した。
輸送船のハッチが開き、眩い照明が二人を照らした。レイナーは黙々とタラップを上りながら、後ろを振り返った。赤い溶岩と灰色の煙に満ちたチャールの地表には、数多くの戦友たちの血とゼルナーガの遺物の残骸、そしてタイカスの冷たい遺体が残されていた。それは勝利というよりは、凄惨な生存と喪失の痕跡だった。
輸送船が轟音を響かせながらチャールの大気圏を突き抜けて上昇した。窓の外へと遠ざかる地獄のような惑星の風景を見つめながら、レイナーは腕に抱いたケリガンをさらに強く抱きしめた。彼女を救出することには成功したが、メンスクとの戦争はまだ終わっておらず、宇宙の脅威も完全に消え去ったわけではないという不安が、彼の心の一角に居座っていた。
レイナーは腕の中のケリガンをしっかりと抱き直し、ゆっくりと洞窟の外へと歩き出した。ドミニオンの輸送船と遊撃隊の艦船が待機する荒涼としたチャールの地表の上に、ついに赤い太陽の光が彼らの顔を照らした。人間の姿を取り戻したケリガンは、レイナーの肩に頭を預けたまま荒い息を吐いており、レイナーは彼女の温もりを感じながら、ついに地獄のような戦場を後にした。
赤く燃えるチャールの地平線を見つめながら、レイナーは自分が払った犠牲と失った仲間たちに思いを馳せた。タイカスを失った悲しみは骨に染みるほど痛かったが、腕の中で息をするサラを見て、彼は自分の選択を後悔しなかった。輸送船が待つ場所へと一歩ずつ進む彼の背後で、自由の翼へと向かう長い旅路の一章が、重厚な余韻を残して幕を閉じた。
コメント 1
타이커스의 마지막 대사는 언제 봐도 가슴이 먹먹하네요. 차 행성의 그 뜨거운 열기가 글에서도 그대로 느껴지는 것 같아요! 🚀