スタークラフト年代記 第20話:預言者が示した、未だ来ぬ終焉
この物語の目次
原作の出来事に基づき新たに執筆されたファンフィクションです。登場人物の感情や台詞、場面の雰囲気は再構成されており、主要な結末を含みます。
暗闇から訪れた旧友

ジム・レイナーはハイペリオンの武器庫の隅に一人座り、テーブルの上の古い拳銃だけを見つめていた。メビウス財団の依頼で正体不明のエイリアンの遺物を回収する旅は過酷であり、タイカスの真意の見えない腹の内は、常に不気味な余韻を残して彼を苦しめていた。疲労が肩にのしかかる中、突然、艦内の照明がかすかに点滅し、周囲の空気が不気味なほど冷たく沈み込んだ。
艦の動力系に問題が生じたのかと思い、席から立ち上がろうとした瞬間、武器庫の濃い影の中から奇妙な揺らめきが立ち上った。レイナーは本能的に腰の拳銃に手を伸ばしたが、すぐにその聞き覚えのある重苦しい気配に気づき、動きを止めた。暗闇を切り裂いて姿を現したのは、傷つき、疲弊しきった様子のダークテンプラー、ゼラトゥルだった。彼の息遣いは荒かった。
ゼラトゥルの古びたマントには数々の戦闘の痕跡が生々しく残っており、その眼差しには深い絶望が宿っていた。レイナーは警戒を解いて近づき、彼の無事を尋ねたが、ゼラトゥルは答える代わりに沈痛な視線で老いたテランを見つめるだけだった。彼は、宇宙の巨大な破滅が近づいており、自分はこれまで恐るべき真実を追い求めて果てしない暗闇の中を彷徨っていたのだと、低い声で囁いた。
ダークテンプラーは震える手で、奇妙な緑色の光を放つ小さなクリスタルを取り出し、レイナーに向けて差し出した。それは、プロトスが自らの記憶と経験を完全に封じ込める「イハン・クリスタル」と呼ばれるものだった。ゼラトゥルは、自分が目撃した破滅の兆候と古代の予言の真実がすべてこの中に収められていると説明し、この重い荷をレイナーに託そうとした。彼の声には切実な願いが込められていた。
レイナーは慎重にクリスタルを受け取った。冷たい表面の向こうから、未知の巨大なエネルギーが脈打つように彼の掌へと流れ込んできた。彼は、なぜよりによって自分にこれほど重要なものを託すのかと尋ねたが、ゼラトゥルは、運命の歯車はすでに回り始めているという不可解な言葉を残すのみだった。レイナーの選択がすべてを決定づけるだろうという、重い警告とともに。
ゼラトゥルはレイナーに、クリスタルを通じて自分が経験したすべてを直接確かめるよう求めた。真実は、定命の者の言葉では到底説明できないほど巨大で、絶望的だからだという。ダークテンプラーの瞳には、長年背負ってきた罪悪感と、訪れる未来への深い恐怖が宿っていた。レイナーはその視線から目をそらさず、黙って頷き、友の頼みを受け入れた。
言うべきことを終えたゼラトゥルは、再び武器庫の濃い影の中へと身を隠し始めた。ヴォイドのエネルギーが彼の体を包み込んで揺らめき、やがて彼の姿は跡形もなく消え去った。ハイペリオンの照明は再び正常に戻ったが、レイナーの心に宿った冷たい不安が消えることはなかった。彼は一人取り残され、手の中のクリスタルを見つめながら、深い思索に沈むしかなかった。
クリスタルから放たれるかすかな光が、レイナーの強張った顔を照らし出した。ケリガンへの復讐心と、遺物回収という目の前の目標の間で葛藤していた彼にとって、ゼラトゥルの訪問は新たな嵐の前兆のようだった。レイナーは深い溜息をつき、このクリスタルが示す真実と向き合うため、静かに自室へと足を運んだ。今、彼は過去の記憶の中へと入っていかなければならなかった。
ウランの廃墟と予言の破片

ジム・レイナーは自室の扉を固く閉ざして机の前に座り、ゼラトゥルが残していったイハン・クリスタルを慎重に置いた。艦のホワイトノイズだけがかすかに響く中、クリスタルはまるで自ら呼吸しているかのように、一定の周期で光を明滅させていた。レイナーは深く息を吸い込み、震える手を伸ばして、冷たいクリスタルの表面にそっと指先を触れさせながら目を閉じた。
その瞬間、強烈な閃光がレイナーの視界を覆い、ハイペリオンの金属の壁が粉々に砕け散った。感覚が遠のくような眩暈が去った後、彼が目を開けた場所は、激しい嵐が吹き荒れる荒涼とした見知らぬ惑星だった。レイナーは、自分がゼラトゥルの視点を通じて世界を見ており、彼の思考や感情をそのまま感じ取っていることに気づいた。ここは忘れ去られた世界、ウランだった。
ゼラトゥルは、巨大なゼルナーガの寺院の廃墟の間を歩いていた。長年の風雨にさらされて削られた石造りの構造物は、かつての栄光を失い、不気味にそびえ立っていた。彼は、創造主たちが残した古代の予言の破片を探すため、この見捨てられた惑星までやってきたのだ。レイナーは、ゼラトゥルの内から湧き上がる切迫感と、宇宙の終焉を阻止しなければならないという重い使命感を、ありのままに感じることができた。
廃墟の奥深くへ進むほど空気はさらに重くなり、未知の古代の気配が肌を刺した。ゼラトゥルは壁面に刻まれた幾何学的な紋様を慎重になぞりながら、そこに込められた意味を解読しようと努めた。予言は巨大な捕食者と万物の終焉について語っていたが、その内容はあまりにも断片化されており、完全な真実を把握するには到底足りなかった。
紋様を解析していたゼラトゥルの意識の中に、突如として異質な感覚が入り込んできた。それはゼルナーガの神聖な気配とはまったく異なる、おぞましく飢えた殺気だった。ザーグの群れが、この忘れ去られた惑星にまで破滅の影を落としていたのだ。レイナーはゼラトゥルの鼓動が速くなるのを感じ、この荒涼とした廃墟に自分たちだけが存在しているのではないことを直感して身構えた。
風に乗って聞こえてくる不気味な咆哮とともに、大地がかすかに振動し始めた。ゼラトゥルは即座にヴォイドのエネルギーを引き出して身を隠し、周囲の気配を探った。彼は、それが単なる野生のザーグではなく、巨大な軍団を統制する強力な意志がここに降臨したのだと悟った。そのおぞましくも聞き覚えのある気配は、ゼラトゥルの魂の奥深くに刻まれた恐怖を刺激した。
暗い影の中から赤い光が閃き、廃墟の残骸の間からザーグの兵力がなだれ込み始めた。ゼラトゥルは冷静にワープ・ブレードを起動し、迫り来る戦闘に備えた。レイナーはゼラトゥルの視界を通じて押し寄せる怪物たちを見つめながら、この記憶の果てに何が待ち受けているのか分からない恐怖に囚われた。避けることのできない血塗られた衝突が、目の前に迫っていた。
ゼラトゥルは隠蔽状態を維持したまま俊敏に動き、予言の破片がある祭壇へと進んだ。ザーグの包囲網は徐々に狭まり、空気中には血と酸性液の嫌悪感を催す臭いが立ち込めていた。レイナーはゼラトゥルの固い意志と揺るぎない決意を感じ、このダークテンプラーがどれほど過酷な旅を一人で耐え抜いてきたのかを骨の髄まで実感した。まるで嵐の目の中へと歩みを進めているかのようだった。
刃の女王との避けられぬ遭遇

祭壇に近づこうとしたゼラトゥルの足が突如として止まった。廃墟の中央、ザーグの群れが道をあけて退いた場所に、おぞましいほど圧倒的な存在感が漂っていた。刃の女王、サラ・ケリガンだった。彼女の背中から伸びた骨の翼が不気味な音を立てて揺れ、周囲の空気さえも彼女のサイオニック・エネルギーに押し潰されて歪んでいるかのようだった。レイナーの胸が張り裂けんばかりに激しく波打った。
ケリガンは冷ややかな笑みを浮かべ、暗闇に潜むゼラトゥルに向けて嘲り混じりの挨拶を投げかけた。彼女はゼラトゥルが何を探しているのかすでに知っており、自分もまたその古代の予言の真実に関心があると言った。レイナーはゼラトゥルの怒りと悲しみを同時に感じながら、かつて人間だった女性がこれほど残酷な怪物へと変貌してしまった現実を、再び痛切に突きつけられた。
ゼラトゥルは隠蔽を解いて姿を現し、予言は彼女のような堕落した存在のものではないと断固として一喝した。彼はワープ・ブレードを掲げ、ケリガンに向かって猛然と突進した。二人の強力なサイオニック能力者の衝突により、廃墟全体が轟音を立てて揺れ、眩い閃光が四方に飛び散った。レイナーはその破壊的な力の余波をまともに受け、息を切らした。
戦闘は凄惨を極めた。ケリガンの鋭い爪がゼラトゥルのシールドを切り裂き、ゼラトゥルの刃は彼女の硬い甲殻を切り裂いた。レイナーはゼラトゥルの痛みを我がことのように感じ、ケリガンが放つ濃密な殺意に身震いした。彼女の攻撃には一瞬の躊躇もなく、ただ相手を切り刻むという純粋な破壊衝動に満ちていた。それは地獄そのものだった。
激しい攻防が続く中、ケリガンの口から意味深な言葉がこぼれ落ちた。彼女は、宇宙を飲み込む巨大な闇が近づいており、自分自身でさえその力の前には恐怖を感じると、嘲笑うかのように言った。レイナーは、彼女の傲慢な態度の裏に隠された奇妙な恐怖を察知した。刃の女王すら恐れる存在がいるという事実は、ゼラトゥルとレイナーの双方にとって衝撃だった。
一瞬の隙を突いたゼラトゥルのワープ・ブレードが、ケリガンの翼の一枚を鋭く切り落とした。黒い血が飛び散ったが、ケリガンは苦悶の悲鳴をあげる代わりに、狂気に満ちた笑い声をあげた。切り落とされた翼は瞬く間に不気味な音を立てて再生し、彼女はさらに猛烈にゼラトゥルを追い詰めた。ゼラトゥルは、この場で彼女を倒すことは不可能だと悟った。
ゼラトゥルは全面対決を諦め、迅速に予言の破片を記憶に刻み込むことに集中した。ケリガンの猛攻を辛うじてかわしながら必要な情報をすべて手に入れた彼は、ヴォイドのエネルギーを爆発させて彼女の視界を遮った。レイナーはゼラトゥルの切迫した心情を感じながら、この恐るべき怪物の手から逃れるために必死で脱出する彼の後ろ姿を見守った。
ウランの軌道へと脱出するゼラトゥルの背後に、ケリガンの不気味な笑い声が幻聴のようにまとわりついた。彼女は、ゼラトゥルが予言を解読したところで、訪れる破滅を防ぐことはできないだろうと呪いの言葉を吐いた。レイナーは息を荒くしながら、ケリガンとの遭遇が残した深い傷跡を噛み締めた。彼女は相変わらず無慈悲な怪物だったが、その言葉の裏には、何かさらに巨大な絶望が隠されていた。
ザクールの堕落とハイブリッドのおぞましき真実

ウランでの恐ろしい記憶が薄れると、イハン・クリスタルはレイナーをまた別の見知らぬ世界へと導いた。そこはプロトスの古代の知識が眠る記録保管所、惑星ザクールだった。ゼラトゥルはウランで得た断片的な予言を解読するため、この地の神聖な「継承者」たちを訪ねてきたのだ。しかし、レイナーの目の前に広がったザクールの姿は、平和な知識の聖域とは程遠いものだった。
惑星全体を覆っていたのは、息が詰まるような不気味で濁ったエネルギーが放つ帳だった。古代の図書館や神殿は奇怪に歪み、空気中には堕落したサイオニックの波動が不協和音のように響き渡っていた。ゼラトゥルは、この神聖な場所が恐るべき力によって汚染されたことを直感し、怒りと悲しみが入り混じった感情でワープ・ブレードの柄を強く握りしめた。
ゼラトゥルの行く手を阻んだのはザーグではなかった。それは、ザクールを守るべきプロトスの戦士たちだった。しかし、彼らの目は理性を失って赤く燃え上がり、体からは見慣れない邪悪な気配が漂っていた。誰かが彼らの精神を支配し、堕落させたことは明白だった。レイナーは、同胞を斬らねばならないゼラトゥルの惨憺たる心境をそのまま感じ取り、唇を噛み締めた。
堕落した守護者たちを突破し、記録保管所の心臓部に到達したゼラトゥルは、おぞましい光景を目撃した。3人の継承者たちが巨大なエネルギーの障壁に閉じ込められ、苦痛の中で生命力を搾取されていた。接着するその中心には、プロトスの優雅さとザーグの醜悪さが奇怪に融合した怪物、「ハイブリッド」が鎮座していた。それは自然の摂理に反する、恐るべき神への冒涜そのものだった。
ハイブリッドは継承者たちの知識とエネルギーを吸い取り、自らを創造した暗黒の主の意志を体現していた。ゼラトゥルはこの怪物が放つ圧倒的な悪意に戦慄しながらも、継承者たちを救うために身を投じた。レイナーはハイブリッドが上げるおぞましい悲鳴に耳を塞ぎたくなったが、記憶の流れは彼をこの残酷な戦闘の渦中へと容赦なく引きずり込んだ。
ハイブリッドの力は想像を絶していた。それは強力なサイオニック・ストームとザーグの肉ティック再生力を同時に駆使し、ゼラトゥルを追い詰めた。堕落したプロトスの守護者たちまで加勢してゼラトゥルを包囲すると、状況は絶望的なものへと変わっていった。しかし、ゼラトゥルは諦めず、ヴォイドの力を極限まで引き出してハイブリッドの弱点を突いた。レイナーは彼の不屈の意志に深い敬意を抱いた。
シ烈な死闘の末、ゼラトゥルのワープ・ブレードがハイブリッドの醜悪な心臓を貫いた。怪物は断末魔の悲鳴を上げて灰の粉となって散り、ザクールを圧迫していた堕落したエネルギーも徐々に晴れ始めた。拘束から解放された継承者たちは、疲弊した体を引きずってゼラトゥルの前に立った。レイナーは同胞を救ったという安堵感とともに、ハイブリッドという恐るべき存在がもたらす恐怖を胸に刻み込んだ。
継承者たちはゼラトゥルが持ち帰った予言の破片を解読し、恐るべき真実を語り聞かせた。予言は、堕落した者「アモン」の帰還と、彼がもたらす宇宙の完全な終焉を警告していた。巨大な捕食者はハイブリッドを先兵として、すべての生命を飲み込もうとしていた。レイナーはゼラトゥルの記憶の中で響き渡る終焉の宣告を聞き、自分が背負った荷がいかに重いかを悟り、身震いした。
アイアーに眠るオーバーマインドの悲劇的な記憶

ザクールの恐ろしい真実が薄れ、クリスタルはレイナーを再び時間と空間を超えた場所へと導いた。目の前に広がった光景は、生い茂る密林と醜悪なザーグのクリープが絡み合う廃墟、まさにプロトスの故郷アイアーだった。ゼラトゥルは、自らの故郷を蹂躙した元凶であり、巨大な遺骸として残されたオーバーマインドの残骸を求めてここに戻ってきたのだ。空気中には深い哀愁が漂っていた。
オーバーマインドの巨大な死骸は、まるで山脈のようにアイアーの大地の上に固まっていた。ゼラトゥルはその巨大な触手と化石化した外皮の間を歩きながら、複雑な感情に襲われた。自らの手で終わらせられなかった戦争の傷跡であり、同胞を虐殺した怪物の墓場だった。しかし、予言の最後のピースを合わせるためには、この怪物の脳皮質に残された残留記憶を読み取らなければならなかった。避けることのできない宿命だった。
ゼラトゥルがオーバーマインドの巨大な大脳皮質に手を置いた瞬間、爆発的な情報の津波がレイナーの精神を直撃した。それは断片的な幻影ではなく、オーバーマインドという巨大な意識の誕生と進化、そして抑圧の歴史そのものだった。レイナーは息を切らし、ザーグ軍団の支配者が感じていた根源的な感情の渦の中へと、なす術もなく吸い込まれていった。恐るべき真実が待ち受けていた。
記憶の中のオーバーマインドは、決して自由な君主ではなかった。未知の巨大な闇の存在、アモンがオーバーマインドの意識の奥深くに強制的な命令を刻み込んでいたのだ。それはプロトスを吸収し、宇宙を破滅させよという、逆らうことのできない指示だった。オーバーマインドは自らの意志とは無関係に破壊の道具へと成り下がった自らの境遇に、深い絶望と怒りを感じていた。
レイナーは衝撃に包まれた。宇宙最悪の災厄だと思っていたオーバーマインドが、実は巨大な鎖に繋がれた奴隷に過ぎなかったという事実は、彼のすべての常識を覆すものだった。オーバーマインドはアモンの支配から逃れるため、長年にわたり密かに抗い続け、軍団の生存のための唯一の出口を模索してきた。その出口の正体が明らかになった瞬間、レイナーは心臓が止まるような思いがした。
オーバーマインドが自らのすべてを賭けて創り出した唯一の希望、それこそが「刃の女王」ケリガンだった。アモンの統制から逃れ、自由意志を持つことができる唯一の存在として、彼女を改造したのだ。ケリガンは単なる殺戮の道具ではなく、暗黒の主の計画を破壊し、ザーグ軍団を解放する救済者として設計されていた。レイナーの頭の中が真っ白になるほどの衝撃だった。
ゼラトゥルもまた、この恐るべき逆説の前に驚愕を禁じ得なかった。自分たちの故郷を蹂躙した凶悪な怪物が、実は宇宙を救う唯一の鍵を創り出していたという事実は、プロトスのプライドにとっては容易に受け入れがたい真実だった。しかし、オーバーマインドの記憶はあまりにも鮮明で、真実だった。ケリガンに与えられた自由意志こそが、アモンの完璧な計画を崩す唯一の変数だったのだ。
レイナーは幻影の中で荒い息を吐いた。自分がそれほどまでに憎み、必ずこの手で殺すと誓ったあの怪物が、宇宙の唯一の希望であるという事実が、彼の魂を切り裂いた。復讐心と使命感の間で道を見失った彼の内面は、抑えきれない混乱に陥った。オーバーマインドの悲しい記憶は、レイナーに引き返すことのできない重い荷を背負わせ、徐々に消え去っていった。
タサダールの姿を借りた者の警告

オーバーマインドの記憶が残した衝撃が冷めやらぬうちに、アイアーの廃墟の上に眩い光が渦巻き始めた。灰色の大地の上に、言葉にできないほど純粋なエネルギーが結集し、やがて見覚えのある荘厳なプロトスの姿を形作った。ゼラトゥルは信じられないというように目を見開き、その光の存在を見つめた。それは、遥か昔にアイアーのために犠牲となった英雄、タサダールの姿だった。
ゼラトゥルは震える声で旧友の名を呼び、膝をついた。死んだとばかり思っていた英雄の帰還に、彼の胸はこみ上げる感動で震えた。レイナーもまた、過去の記憶の中でタサダールの高潔な犠牲を思い出し、畏敬の念を抱いた。しかし、光の姿が口を開いた瞬間、レイナーはゼラトゥルの感動とは異なる奇妙な違和感を察知した。何かが本質的に違っていた。
その存在はタサダールの声を借りて語っていたが、その裏にあるエネルギーはプロトスのそれとは次元が異なっていた。はるかに古く、巨大で、深淵のように深い気配だった。レイナーは直感的に、あの存在が本物のタサダールの復活ではなく、その親しみやすい器を借りて自らを表した、より高次の存在であることに気づいた。それはどこかに囚われたまま、メッセージを伝えているかのようだった。
光の存在は、オーバーマインドの記憶がすべて真実であることを裏付けた。彼はアモンの巨大な陰謀とハイブリッドの脅威を警告し、ケリガンが宇宙の運命を握る唯一の鍵であると断言した。彼女が生き残ってこそ、アモンの計画を阻止し、訪れる終焉を防ぐことができるというのだ。ゼラトゥルは混乱しながらも、その存在の圧倒的な権威の前に頭を垂れ、教えに耳を傾けた。
この存在の正体は、後にヴォイドの中で明らかになる最後のゼルナーガ「オロス」がタサダールの姿を借りて送った精神的投影だったが、当時のゼラトゥルとレイナーは、ただタサダールの高潔な魂がヴォイドと融合して現れたのだと信じるのみだった。彼らが感じたのは、正体不明の遥かなる古代の気配と、彼が伝えるメッセージの厳粛な重みだった。宇宙の運命がケリガンの生存にかかっているという警告は、レイナーの肩に重くのしかかり、個人的な復讐心は宇宙規模の大災厄の前で限りなく小さくなっていった。
光の存在は、もし刃の女王が死を迎えたなら、どのような未来が訪れるかをしっかりと見届けるようにと言い、ゼラトゥルとレイナーの意識を別の次元へと引き込んだ。それは単なる予言ではなく、ケリガンが不在の場合に必然的に発生する恐るべきシミュレーションだった。レイナーは抵抗する間もなく、その暗く絶望的な幻影の中へと真っ逆さまに落ちていった。深淵が彼を飲み込もうとしていた。
視界が暗くなり、光の存在は徐々に霧散していった。彼は最後に、このすべての因果を断ち切ることができるのは、ただ勇気ある者の選択のみであるという言葉を残した。レイナーはその言葉がゼラトゥルを超え、自分に向けられていることを痛切に感じた。タサダールの姿を借りた者は、そうして真実の重みだけを残して消え去り、レイナーは今、最も恐ろしい悪夢と向き合わねばならなかった。
アイアーの廃墟は消え去り、果てしない暗闇が四方を囲んだ。空気中には血と灰の臭いだけが立ち込め、希望など微塵も見出せない死の静寂が降りていた。レイナーは、迫り来る幻影が決して現実にしてはならない未来であることを知りながらも、その圧倒的な絶望感に息が詰まった。ケリガンが消えた宇宙、その恐るべき終焉が、徐々に姿を現し始めていた。
ケリガンが消えた宇宙の暗黒の幻影

イハン・クリスタルが創り出した幻影は、恐ろしいほどに生々しかった。レイナーが目を開けた場所は、灰色の雲が空を覆い、大地は黒く焼け焦げた絶望の戦場だった。ここはケリガンが死に、アモンの計画が完全に成功した時に繰り広げられる仮想の未来だった。空には無数のハイブリッドが太陽を遮って飛び交い、地上にはアモンの意志に完全に屈服したザーグの群れが果てしなく押し寄せていた。
テランの文明はすでに跡形もなかった。数々の惑星が燃え上がり、人類はアモンの軍勢の前に無力に踏みにじられ、絶滅を迎えて久しかった。レイナーはこの幻影の中に自分が存在しない事実に気づき、不気味な虚無感を覚えた。彼がケリガンを殺す選択をした代償として、彼が守ろうとしたすべてが灰燼に帰した恐るべき結果が、目の前に広がっていた。
最後の戦場には、わずかなプロトスの生存者だけが残り、最後の抗戦を繰り広げていた。アルタニスやセレンディスをはじめとする偉大な英雄たちが背中を合わせ、決死の覚悟で戦っていたが、果てしなく押し寄せるハイブリッドと堕落したザーグの波を防ぐには力不足だった。彼らの眩いサイオニックの刃の光も、漆黒の闇の前では儚く明滅する蝋燭の火に過ぎなかった。絶望だけが支配する戦いだった。
アモンの陰鬱で巨大な声が戦場全体に響き渡った。彼は、失敗作である被造物たちの時代は終わり、今や自分がすべてを無に帰し、永遠の静寂をもたらすと宣言した。その声にはいかなる怒りも憎しみもなく、ただ冷酷で絶対的な破滅の意志だけが込められていた。レイナーはその声を聞くだけで、魂が凍りつくような恐怖に囚われた。
プロトスの英雄たちは一人、また一人と倒れていった。セレンディスの艦船が墜落して巨大な爆発を起こし、アルタニスの決然とした叫びもハイブリッドのおぞましい悲鳴にかき消されて消えた。彼らは最後まで誇りを失わずに戦ったが、定められた破滅を避けることはできなかった。レイナーはゼラトゥルの視線を通じて同胞の完全な滅亡を見届け、血の涙を流すダークテンプラーの苦痛を分かち合わねばならなかった。
最後に残ったプロトスの戦士までもがハイブリッドの爪に引き裂かれて倒れると、戦場には不気味な静寂だけが降りた。アモンはザーグ軍団すら不要になったとして、彼らの生命力をことごとく吸収してしまった。宇宙を満たしていた生命の鼓動は完全に停止し、ただアモンと彼のハイブリッドたちだけが、空虚な宇宙を漂っていた。それは平和ではなく、すべての可能性が消滅した完全な死だった。
レイナーは、このすべての絶望的な光景がすでに決定された実際の歴史ではなく、ケリガンが死んだときに訪れ得る最も有力な破滅のビジョンであり警告であることを胸に刻み、必死に精神を保った。しかし、幻影が放つ生々しい絶望の重みは、彼の魂を押し潰すのに十分だった。ケリガンという唯一の変数が消えた瞬間、宇宙はこれほどまでに虚しくアモンの手に落ちてしまうのだ。彼女は単なる怪物ではなく、終焉を阻む最後の砦だった。
幻影の終わり際、アモンの赤い瞳が虚空を切り裂き、レイナーの魂を射抜くかのようだった。すべての光が消え去り、絶対的な闇が視界を完全に覆い尽くした瞬間、レイナーは息が詰まるような苦痛の中で悲鳴を上げ、意識の表層へと弾き飛ばされた。恐ろしい未来の幻影は終わったが、それが残した冷たい恐怖は彼の骨の髄まで刻み込まれ、消えることはなかった。
重い真実を背負いし者の苦悩

レイナーは荒い息を吐きながら、イハン・クリスタルから慌てて手を離した。耳元を打っていたアモンの声やおぞましい悲鳴が瞬時に消え去り、ハイペリオンの自室の聞き慣れたホワイトノイズがその場所を満たした。全身は冷や汗でびっしょりと濡れ、心臓は肋骨を突き破らんばかりに激しく鼓動していた。彼はよろめきながら机に寄りかかり、たった今目撃した恐ろしい幻影の残像から逃れようと努めた。
自室の冷たい金属の床に座り込んだレイナーの視線が、テーブルの上に置かれた古いリボルバーへと向かった。それは、彼がケリガンの頭に弾丸を撃ち込んでやると誓い、大切に保管してきた復讐の象徴だった。しかし、クリスタルが示した真実は、彼の長年の誓いを粉々に打ち砕いてしまった。彼がそれほどまでに憎んだ怪物が、実は全宇宙を救う唯一の鍵であるという事実は、過酷な刑罰のようだった。
レイナーは両手で顔を覆い、深い苦悩に沈んだ。自分がケリガンを殺せば、宇宙はアモンの手によって完全な破滅を迎えることになる。だからといって、彼女が犯した数々の虐殺や、タイカスをはじめとする仲間たちの犠牲を忘れることもできなかった。復讐と救済の間で道を見失った彼の魂は、引き裂かれるかのようだった。ゼラトゥルがなぜこの重い荷を自分に押し付けたのか、ようやく理解できた気がした。
メビウス財団の依頼で集めているゼルナーガの遺物が脳裏をよぎった。あの遺物たちが単なる武器ではなく、もしかするとケリガンを殺さずに彼女を浄化できる唯一の希望かもしれない、という考えが浮かんだ。もし彼女を元のサラ・ケリガンに戻すことさえできれば、アモンの支配から逃れ、自由意志を持った救済者にできるかもしれない。それは、一筋の細い希望の光だった。
しかし、この恐るべき真実を艦の乗組員たちにどう説明すべきか、途方に暮れた。ホーナーやタイカス、そしてザーグに家族を奪われた数多くの乗組員たちは、ケリガンを生かしておくべきだという事実を決して納得しないだろう。彼らにとって刃の女王は、叩き潰すべき怪物に過ぎなかった。レイナーは、この重い真実を当面の間、一人で背負わなければならない事実に深い孤独を覚えた。身に染みる寂しさだった。
席から立ち上がったレイナーは自室の窓辺に近づき、冷たく無関心に輝く宇宙を見つめた。無数の星が散りばめられたあの闇の向こうのどこかに、刃の女王となったサラがいるはずだ。そして、それよりもさらに深い深淵の中では、アモンが破滅の時を待っているのだろう。数十億の生命が自分の肩に乗せられているかのように、息をすることさえ息苦しく感じられた。逃げ場所はなかった。
レイナーは拳を強く握りしめた。まだ惑星チャールへ攻め込むには準備が到底足りず、遺物回収も終わっていなかった。しかし、彼の心の中にはすでに、引き返すことのできない決断が下されていた。彼はケリガンを殺さない。彼女を救い、この宇宙を襲う巨大な闇からすべてを守り抜くのだ。それがどれほど苦しく、険しい道であろうとも。
テーブルの上のリボルバーを手に取ったレイナーは、それを再び腰に差し込んだ。銃口の向きは、もはや復讐ではなく救済へと合わせられていた。イハン・クリスタルの緑色の光が、彼の決意に満ちた顔を照らした。ジム・レイナーは深く息を吐き、自室の扉を開けて歩み出た。迫り来る巨大な嵐に立ち向かうため、彼はもう一度、地獄へと歩んでいく覚悟を決めた。サラを救うための旅が始まった。
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