ディアブロ年代記 第6話:大聖堂の階段は下へと続くのみだった
この物語の目次
原作の出来事をもとに新たに執筆されたファンフィクションです。登場人物の感情や台詞、場面の雰囲気は再構成されており、主要な結末を含みます。
崩れ落ちた故郷と生存者たちの証言

トリストラムに到着したアイダンの目の前に広がっていた光景は、惨憺たるものそのものだった。平和だった村は深い霧と不気味な気配に押しつぶされ、広場には静寂だけが漂っていた。崩れ落ちた屋根や瓦礫は、この地に降りかかった災厄の大きさを物語っていた。故郷に戻ったという安堵感よりも、冷たい絶望が先に胸を締め付けた。
宿屋の近くには、怯えきった少数の生存者たちだけが集まって震えていた。彼らの瞳からは希望が消え去って久しく、見慣れない足音にさえ激しく怯え、警戒する様子が歴然としていた。アイダンは重い足取りで村の中心部へと向かい、そこで古びた杖に寄りかかって立つ一人の老人を見つけた。
ホラドリムの最後の末裔であるデッカード・ケインは、近づいてくる戦士の顔を一目で認識した。しわ刻まれた老人の顔に、一瞬の喜びと深い悲しみが交錯した。ケインは震える声で王子アイダンの帰還を歓迎し、彼が不在の間にカンドゥラスの心臓部で起きた恐ろしい悲劇を一つずつ語り始めた。
大司教ラザルスの恐るべき裏切りと、それによって狂気に陥ったレオリック王の狂気は、村を破滅へと追いやった。ケインの口から語られる真実はあまりにも過酷で、アイダンはとても顔を上げることができなかった。忠実だった騎士たちは処刑され、愛する弟のアルブレヒト王子はラザルスの手によって闇の中へと連れ去られたというのだ。
アイダンは剣の柄を砕かんばかりに握りしめた。父が暴君へと堕落し、領民たちを虐殺したという事実は、彼の魂をズタズタに引き裂いた。自分が戦場で血を流している間、真の敵は最も安全であるべき王国の心臓部にとぐろを巻いていたのだ。王子として、そして兄として家族を守れなかったという罪悪感が押し寄せた。
悲劇はそれだけにとどまらなかった。ラザルスは行方不明のアルブレヒト王子を捜索するよう村人たちを扇動し、彼らを大聖堂の奥深くへと誘い込んだ。救助隊という名目で集まった平凡な村長や農民たちは、松明や干し草フォークを手にして地下へと降りていったが、彼らを待ち受けていたのは想像を絶する残虐な悪魔たちの罠だった。
隅に座り込んで酒に酔い、うわごとを呟くファルナムの姿がその惨状を証明していた。彼は血の海となった地下室と、人々を引き裂き殺した怪物の恐ろしい姿を口ずさみながら、発作のように体を震わせた。平凡な隣人たちが味わったであろう極限の恐怖と苦痛がアイダンの耳裏を離れず、彼をさらに深い怒りの沼へと突き落とした。
アイダンは決然とした眼差しで大聖堂を見上げた。血の色に染まったステンドグラスの向こうで、濃い闇が揺らめいていた。彼はこれ以上、悲しみに暮れているわけにはいかなかった。カンドゥラスの王子として、そして一人の戦士として、彼は領民たちの無念を晴らし、弟を捜し出さねばならなかった。大聖堂の固く閉ざされた扉が彼を呼んでいた。
闇へと足を踏み入れる三人の異邦人

不気味な赤い輝きを放つ大聖堂の入り口の前に立っていたのは、アイダン一人ではなかった。闇の気配に引き寄せられ、あるいはそれぞれの明確な目的を胸にトリストラムを訪れた異邦人たちがいた。「見えざる眼の姉妹団」からやってきたローグのモレイナは、弓の弦をきつく引き絞り、聖堂から漂い出る悪の気配を睨みつけていた。
モレイナは、東から吹いてくる堕落の気配が自分たちの姉妹団をも脅かしていることを察知していた。彼女は弓矢と俊敏な身のこなしだけで、この根源的な悪を浄化するという強い意志を抱いていた。彼女の鋭い視線は、すでに聖堂内部の濃い影の中に潜んでいるであろう悪魔たちの首元を狙っているかのようだった。
彼らの反対側には、ヴィジェレイ・クラン出身の魔術師ジャズレスが杖をついて立っていた。彼は世界の知識を探求する学者であり、強力な元素魔法の使い手だった。ジャズレスの瞳には、恐れよりも禁じられた秘術の知識や古代の魔法の遺物に対する強烈な好奇心、そして力への果てしない渇望が燃え盛っていた。
出自も、目的も、戦い方も異なっていたが、三人は大聖堂の下にとぐろを巻く巨大な悪に立ち向かわねばならないという共通の運命で結ばれていた。アイダンは黙って頷き、彼らの同行を受け入れた。この呪われた地下迷宮は、決して一人で対処できる場所ではないことを、立ち込める死の臭いが警告していたからだ。
重々しい木製の扉がきしむ音を立てて開くと、腐った血と古い埃が混ざり合った悪臭が鼻を突いた。聖堂の内部はすでに神聖な気配を失って久しく、破壊された祭壇や逆さまに吊るされた象徴だけが、異教徒の恐ろしい儀式を物語っていた。三人は武器を握り直し、慎重に最初の一歩を踏み出した。
大聖堂の階段は、ただ下へと続くのみだった。地上から差し込んでいた一筋の光さえ、数歩降りると深い闇の中へと完全に飲み込まれた。松明の微かな炎だけが、彼らの強張った顔を照らし出す。地下の冷たい空気が肺を刺すたびに、彼らは生者の世界からますます遠ざかっていることを痛切に感じていた。
闇の中から絶え間なく聞こえてくる正体不明の音が、彼らの聴覚を刺激した。骨がぶつかり合うカタカタという音、肉が引き裂かれるような生々しい音、そして低く唸る獣の息遣いが四方から響き渡った。それは単なる幻聴ではなく、地下を徘徊する恐ろしい怪物たちが侵入者を歓迎する方法だった。
モレイナがまず闇に向けて矢を放ち、巨大な蜘蛛を一匹射抜いた。ジャズレスの指先から稲妻が放たれ、迫り来るスケルトン兵たちを灰に変えた。アイダンは剣を大きく振りかざし、行く手を阻むアンデッドたちの骨を砕きながら先頭に立った。三人の英雄による、残酷で長い探索が遂に幕を開けたのだ。
血の部屋とブッチャーの恐怖

地下深くへ降りるほど、空気中の生臭さはさらに増していった。廊下のあちこちには、原形を留めないほど損壊した死体が転がっていた。それは怪物の仕業というよりは、誰かが意図的に残虐に肉を削ぎ落とした痕跡に近かった。アイダンは強張った表情で、床に溜まった粘り気のある血の海の上を慎重に歩いた。
やがて彼らは、四方が血で塗りつぶされた恐ろしい部屋の前にたどり着いた。天井にはフックに突き刺された死体が肉塊のように吊るされ、床には内臓と骨が山のように積み上がっていた。ファルナムが狂ったように呟いていた地獄の屠殺場(ブッチャーの部屋)が、まさにここだった。村人たちが味わったであろう極限の恐怖が、鮮明な幻影のようにアイダンを襲った。
その瞬間、部屋の奥の闇から重苦しい足音が聞こえてきた。「ああ、新鮮な肉だ!」という獣のような咆哮が石壁を揺らし、鼓膜を破らんばかりに響き渡った。血と肉片にまみれた巨大な悪魔、ブッチャーが、血の滴る巨大な肉切り包丁を掲げ、彼らに向かって凄まじい速度で突進してきた。
ブッチャーの圧倒的な巨躯と放たれる殺気は、息を呑むほどだった。彼が肉切り包丁を一度振るうたびに、空気が切り裂かれるような風切り音が響いた。アイダンは盾を構えて辛うじて最初の一撃を防いだが、骨の髄まで伝わる凄まじい衝撃に大きく後方へ弾き飛ばされた。盾は歪み、腕がちぎれるような激痛が走った。
モレイナは素早く身を翻し、ブッチャーの側面に回り込んだ。彼女の弓の弦が立て続けに弾け、鋭い矢がブッチャーの厚い皮に突き刺さった。しかし、痛みを感じないかのような怪物はむしろさらに激怒し、彼女に向かって包丁を振り下ろそうとした。刹那の瞬間、ジャズレスの炎の魔法がブッチャーの顔面で炸裂した。
視界を遮られたブッチャーが怪声を上げ、虚空に向かって包丁を振り回した。その無差別な乱打によって部屋の柱は真っ二つに折れ、石の破片が四方に飛び散った。単純な腕力だけで全てを破壊する怪物の力を前に、ラザルスに従ってここへやってきた、武装すら貧弱だった村人たちがどれほど無力に虐殺されたか、容易に想像がついた。
アイダンは怒りを原動力に再び剣を握り、立ち向かった。無辜の領民たちの血に染まったこの怪物を生かしておくわけにはいかなかった。彼はブッチャーの荒々しい攻撃を紙一重でかわし、怪物の膝の裏の関節を深く切り裂いた。バランスを崩してよろめいたブッチャーの巨体が、床に向かって崩れ落ち、轟音を立てた。
その隙を逃さず、アイダンはブッチャーの太い首筋に向かって剣を深く突き刺した。黒い血が噴水のように噴き出し、怪物は恐ろしい断末魔とともに暴れ回った末、ついに息絶えた。血まみれになった部屋には、荒い息遣いだけが残された。無辜の人々の復讐を果たしたものの、アイダンの心には依然として重い澱が残っていた。
スケルトンキングの墓所と息子の涙

ブッチャーの部屋を通り過ぎてさらに深くへ降りると、湿った土の壁の代わりに、精巧に彫刻された大理石の柱が現れ始めた。王家の地下墓所だった。壁面にはカンドゥラスの紋章が刻まれた古い旗が、朽ちかけた状態で掛けられていた。アイダンは見慣れたその紋章を見つめながら、これから訪れる悲劇的な再会への予感に唇を噛み締めた。
巨大な墓の中心部に達した時、背筋を凍らせるような冷たい笑い声が墓所全体に響き渡った。骨と鉄でできた巨大な玉座の上で、漆黒の甲冑をまとった骸骨の姿をした怪物がゆっくりと身を起こした。その虚ろな眼窩からは、不気味な赤い眼光が燃え盛っていた。かつてカンドゥラスを統治したレオリック王だった。
「生者が恐れ多くも我が玉座を狙うか。跪け。ここでは何者も我に逆らうことはできぬ」スケルトンキングの口から漏れる声は、金属の擦れるような呪いに近かったが、アイダンはその中に父の面影を見出し、胸が張り裂ける思いだった。威厳に満ち、慈愛深かった王の姿はどこにもなく、狂気と堕落に呑まれた恐ろしいアンデッドの君主だけがそこに残り、実の息子さえ認識できずにいた。
スケルトンキングが巨大な両手用メイスを振るうと、墓のあちこちから数十体ものスケルトン兵が土を突き破って這い出てきた。モレイナとジャズレスが兵士たちを相手にする間、アイダンは一人で父の幻影と対峙しなければならなかった。レオリックのメイスが恐ろしい勢いでアイダンの頭部めがけて振り下ろされた。アイダンは剣を掲げ、歯を食いしばってその攻撃を弾き返した。
武器がぶつかり合うたびに散る火花の中で、アイダンは幼い頃に父が自分に剣術を教えてくれた記憶を思い出していた。しかし、今彼の目の前にいるのは、自分を殺そうとする残酷な怪物に過ぎなかった。父を自らの手で斬らねばならないという恐ろしい現実がアイダンの腕を震わせ、彼の動きは何度も鈍った。
「父上、どうか正気に戻ってください!」アイダンが血を吐くように叫んだが、スケルトンキングはただ怒りに満ちた咆哮で応えるだけだった。メイスがアイダンの肩をかすめ、甲冑を砕いて深い傷を残した。引き裂かれるような激痛の中で、アイダンは悟った。父はすでに遥か昔に死んでおり、あの怪物はその肉体を操る邪悪な呪術の産物に過ぎないのだと。
アイダンは悲しみを怒りに変え、剣を握り直した。これは父を殺ことではなく、彼の魂を縛り付けている呪いを断ち切る安息の儀式なのだ。彼はスケルトンキングの荒々しい連続攻撃を受け流した後、隙を突いてメイスを握る腕の関節部分を強く叩き斬った。骨が砕ける音とともに、巨大なメイスが床に転がり落ちた。
バランスを崩したスケルトンキングの胸の真ん中へ、アイダンの剣が容赦なく突き刺さった。赤い眼光が激しく点滅した後に消え入り、レオリックの骨組みだけが残って力なく崩れ落ちた。王冠が床に転がり落ちる鈍い音が墓所に響いた。アイダンは崩れ去った骨灰の前に膝を突き、苦しんだ父の魂のために静かに祈りを捧げた。
腐敗した地下墓所と沸き立つ洞窟

王の安息の地を後にし、一行は迷宮のさらに深部へと向かった。地下墓所の空気は以前よりもはるかに重く濁り、息をすることさえ困難だった。壁面に沿って流れる粘り気のある粘液と、床に敷き詰められた腐敗した苔は、ここが単なる墓を超えて巨大な悪の巣窟へと変貌しつつあることを示していた。彼らの足取りはますます重くなった。
闇の中でぎらつく黄色い瞳が一行を取り囲んだ。獣の角と人間の体を持つ山羊男、カズラたちだった。彼らは血の臭いを嗅ぎつけて集まった飢えた獣のように荒い息を吐きながら、槍や斧を振り回した。モレイナの矢が彼らの眉間を正確に射抜いたが、仲間の死にもお構いなしに襲いかかる狂気は、背筋が凍るほどだった。
墓所の端に達すると、人工的な石造りの建築物は消え去り、荒々しく削られた自然の洞窟が口を開けていた。洞窟の内部へと進むにつれて、押し寄せる熱気が肌を乾燥させた。床の隙間からは真っ赤なマグマが沸き立ち、不気味な赤い光を吐き出していた。地獄の熱気が大地を突き破り、地上近くまで侵食してきているのは明らかだった。
洞窟の生態系は地上のものとは完全に異なっていた。酸性の液体を吐き出す巨大な虫たちや、影に潜んで鎌のような爪で首を狙う醜悪な悪魔たちが、絶えず一行を苦しめた。ジャズレスは障壁の魔法を展開して仲間を守り、アイダンとモレイナは互いに背中を預け合い、四方から押し寄せる敵を斬り、射抜いた。
極限の疲労と緊張感が三人の精神を蝕んでいった。果てしなく続く迷路のような洞窟は、彼らの方向感覚さえも麻痺させた。沸き立つ溶岩の音は、まるで数千人の死者が苦痛に悶えて泣き叫ぶ声のように聞こえた。ここは生者が留まるべき場所ではなく、一瞬一瞬が生存をかけた凄絶な足掻きの連続だった。
それにもかかわらず、彼らは立ち止まらなかった。アイダンは行方不明の弟アルブレヒトを捜し出すという一念だけで、火傷を負いながらも溶岩地帯を渡った。モレイナは姉妹団を脅かす堕落の根源を突き止めるために黙々と闇を見つめ、ジャズレスは魔法の力で道を切り開きながら古代の知識を探求した。彼らの結束力は、危機の最中でさらに強固なものとなった。
洞窟の奥深くで遭遇した巨大なガーゴイルの怪物たちは、石のように頑丈な皮膚で武装していた。アイダンの剣が弾かれ、モレイナの矢が折れたその瞬間、ジャズレスが精神を集中させて強力なチェイン・ライトニングを放った。青い閃光が洞窟を満たし、怪物たちの体を内部から粉々に砕いた。完璧な連携が生み出した勝利だった。
戦闘が終わった後、アイダンは荒い息を吐きながら、溶岩の赤い光に照らされた自分の剣を見つめた。刃はこぼれ、血に染まっていた。彼らが降りてきた深さと同じように、悪の濃度は濃くなっており、これから立ち向かう敵は今とは比較にならないほど強力なはずだ。恐怖が襲ったが、彼は再び剣を強く握り締め、前方へと歩き出した。
呪われた騎士ラクダナンの安息

赤い光が揺らめく地下深く、闇と熱気が交差する深淵の路頭で、一行は血色の甲冑をまとった巨大な騎士の姿と遭遇した。彼の体からは堕落した悪魔の気配が漂っていたが、他の怪物たちのように無闇に襲いかかってくることはなかった。アイダンが警戒して剣を構えると、騎士は苦しげな呻き声を漏らしながら、ゆっくりと手を挙げて敵意がないことを示した。
「待たれよ、若き戦士よ」兜の向こうから聞こえてくるかすれた声に、アイダンはハッとした。その声は間違いなく、カンドゥラスの最も偉大な騎士であり近衛隊長であったラクダナンのものだった。彼は狂気に陥ったレオリック王に立ち向かって反乱を起こしたが、死の間際に王の呪いを受け、永遠に現世を彷徨う血塗られた騎士へと成り下がってしまった悲運の忠臣だった。
ラクダナンは自身の恐ろしい姿を指し示し、惨憺たる心情を吐露した。彼は王を殺害したという罪悪感と、悪魔へと変貌していく肉体の中で辛うじて理性を保ち続ける苦痛に苛まれていた。「我が魂は地獄の入り口で引き裂かれようとしている。どうか、私をこの永遠の拷問から解放してくれ」彼の切実な願いは、アイダンの胸を痛烈に刺した。
ラクダナンは、この深い地下のどこかに隠されている「黄金の秘薬」だけが、自身の呪われた魂を浄化し安息を与えることができると語った。アイダンは、王家の忠実な臣下が受けている恐ろしい刑罰を見過ごすことはできなかった。彼はラクダナンに必ず秘薬を持ち帰ると約束し、仲間たちとともに再び沸き立つ溶岩地帯の迷宮へと身を投じた。
黄金の秘薬を探す道のりは険しかった。溶岩が滝のように降り注ぐ崖や、炎の魔法を操る上級悪魔たちが彼らの行く手を阻んだ。ジャズレスが氷の魔法で溶岩の熱を冷まして隙を作る間、モレイナが悪魔たちの目を射抜いた。アイダンはその隙を突いて炎を突き抜け、祭壇の上に置かれた燦然と輝く黄金の瓶を掴み取った。
手の中で温かく輝く秘薬を胸に抱き、一行は急いでラクダナンが待つ場所へと戻った。騎士はすでに限界に達しているようで、甲冑の隙間から赤い眼光を放ちながら獣のように喘いでいた。アイダンが慎重に近づいて黄金の秘薬を手渡すと、ラクダナンは震える手で瓶を受け取り、一気に読み干した。
秘薬が喉を通った瞬間、奇跡のような出来事が起きた。ラクダナンの体を包んでいた血色のオーラが雪のように消え去り、醜く変形していた甲冑が本来の銀色の輝きを取り戻し始めた。彼の兜の奥で赤く燃えていた眼光も、柔らかな光へと変わり消えていった。ついに彼を縛り付けていたレオリックの残酷な呪いが解けたのだ。
「感謝する、これでようやく真の安息を得られた」ラクダナンは穏やかな声で最後の言葉を残した。彼の体が徐々に光の粉となり、洞窟の闇の中へと散っていった。床には彼が使っていた古い兜だけが残された。アイダンは偉大な騎士の最期を見届けながら深い哀悼の意を表し、この呪いを生み出した悪の根源を必ず断ち切ることを誓った。
トリストラムでの再整備と明らかになった真実

地獄の入り口に達する前に、一行は再整備が必要であることを直感した。ジャズレスが青い光を放つタウン・ポータルを開くと、三人は濃い硫黄の臭いを後にしてその中へと身を投じた。目を開けると、トリストラムの冷たい空気が彼らを迎えた。霧に包まれた憂鬱な空ではあったが、地下の息詰まるような闇に比べれば、そこは眩い天国のようだった。
彼らはまず鍛冶屋のグリスウォルドを訪ねた。巨大な炉の前で槌を振るっていた彼は、血と汚物にまみれた一行の姿を見て重い溜息をついた。「あんたたちが生きて戻るとは奇跡だな」彼は歪んだアイダンの盾と刃こぼれした剣を受け取ると、熟練の技で鍛錬を始め、武具に新たな命を吹き込んだ。
修理が終わると、グリスウォルドは丹念に鍛え上げた鋭い長剣をアイダンに手渡した。「この剣に私のすべての技術と、村人たちの残された希望を込めた。どうかあの呪われた怪物どもの息の根を止めてくれ」重みのある剣を握るアイダンの指先に、鍛冶屋の切実な願いが伝わってきた。それは単なる武器ではなく、トリストラムの意志だった。
一行は村の外れにある魔女アドリアの小屋へと足を運んだ。奇妙な薬草の臭いが立ち込める小屋の中で、アドリアは水晶玉を見つめながら不可解な呪文を呟いていた。彼女は一行が要求する前に、強力な回復のポーションと秘術の魔法が込められたスクロールをテーブルの上に並べ、意味深な微笑を浮かべた。
「お前たちが斬ったのはただの影に過ぎない。本物の闇はまだ目覚めてすらいないのだ」アドリアの冷ややかな声が小屋に響いた。彼女は大司教ラザルスが単なる裏切り者ではなく、はるかに巨大で古代の存在に仕えているのだと警告した。地下深くで蠢く悪の正体は、彼らの想像を絶するものだという意味だった。
広場に戻った彼らを、デッカード・ケインが焦燥した表情で待っていた。ケインは古書をめくりながら、ついにパズルのピースが揃ったと語った。「ホラドリムの記録は正しかった。このすべての惨劇の背後には、恐怖の帝王、ディアブロがいる!」老人の震える叫びは、一行の胸に冷たい短剣を突き刺すかのようだった。伝説の大悪魔が目覚めようとしていたのだ。
レオリック王の狂気、ラザルスの裏切り、ブッチャーの虐殺、およびアルブレヒト王子の失踪まで。すべての出来事はディアブロ復活のための精巧な生贄であったことが明白となった。アイダンは息が詰まるような圧迫感を覚えた。彼らがこれまで繰り広げてきた死闘は、単に地獄の門を叩く前奏曲に過ぎなかったという事実が、痛切に身に染みた。
しかし、退く場所はなかった。恐怖の帝王が完全に力を取り戻して地上へと這い上がれば、トリストラムだけでなくサンクチュアリ全土が火の海と化すだろう。アイダンはグリスウォルドが鍛えてくれた剣を腰に帯び、モレイナとジャズレスと視線を交わした。彼らの瞳には恐れの代わりに、決然とした使命感が燃えていた。三人は再びポータルへと歩みを進めた。
地獄の入り口に立つ

ポータルを越えて再び洞窟の最深部へと戻った彼らを迎えたのは、以前とは次元の異なる恐ろしい光景だった。頑丈だった岩壁は、いつの間にか赤い肉片と骨の槍でできた生体組織へと変貌していた。床はまるで生きている生物のように蠢き、踏みしめるたびにじっとりと血が滲み出た。地獄の領域へと足を踏み入れたのだ。
空気中には硫黄と肉の焦げる嫌悪すべき臭いが立ち込め、息を吸い込むことさえ苦痛だった。四方から放たれる赤い熱気は、肌を焼き焦がさんばかりに熱かった。遥か彼方、大地が真っ二つに裂けた巨大な深淵の中で、不気味な魔力が渦を巻きながら噴き出していた。そこがまさに、地獄へと通じる真の入り口だった。
深淵の入り口の周囲には、血色の翼を羽ばたかせるサキュバスたちや、全身が炎に包まれたバルログたちがうごめいていた。彼らは地獄の門を守る最精鋭の守護者たちであり、侵入者の魂をズタズタに引き裂くために醜悪な武器を掲げていた。悪魔たちの耳を劈くような悲鳴が、幻影の合唱のように耳を打ち、一行の精神をかき乱した。
アイダンは深淵から放たれる圧倒的な恐怖の気配に、一瞬身を震わせた。平凡な人間であれば、その気配だけで狂い出すほどの恐ろしい圧迫感だった。しかし、彼の頭の中には、闇の中へと連れ去られながら泣き叫んだであろう幼い弟アルブレヒトの顔が浮かんだ。弟がこの地獄の真ん中に囚われていると思うと、恐れはすぐに激しい怒りへと変わった。
モレイナは震える手を落ち着かせながら、弓の弦を引いた。姉妹団の教えさえも、この純粋な悪の前では霞んでしまうかのようだったが、彼女は屈しなかった。ジャズレスもまた杖を握り、魔法の力を引き上げた。知識への彼の渇望も、目の前に広がる地獄の現実の前では、ただ生存と破壊のための本能へと置き換わり、鋭く研ぎ澄まされた。
「我々がここで倒れれば、地上は永遠の闇に呑まれるだろう」アイダンが低く、しかし断固とした声で言った。彼の言葉に、仲間たちは黙って頷いた。これ以上の言葉は不要だった。彼らはそれぞれの武器を掲げ、地獄の入り口を守る悪魔の軍勢に向かって、ゆっくりと歩みを進め始めた。
バルログの炎の鞭が虚空を切り裂いて飛び交い、サキュバスたちの呪われた血の滴が雨のように降り注ぎ。アイダンは盾を掲げ、真っ先に敵陣の真ん中へと突撃した。剣が悪魔の肉を切り裂き、矢が赤い翼を射抜き、稲妻が深淵の闇を眩しく照らし出した。地獄の入り口で繰り広げられる、最も凄絶で絶望的な戦いの幕が上がった。
大聖堂の階段から始まった長い探索は、ついに人間界の最果てに到達した。沸き立つ血と炎の中へと飛び込んだ三人の英雄は、その深い深淵の向こうで自分たちを待ち受けているであろう裏切り者ラザルスと恐怖の帝王に向かって進んだ。引き返す道はすでに断たれており、ただ地獄の心臓部を貫くことだけが、彼らに残された唯一の選択肢だった。
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